結論:AT2040とAT2040USB、あなたはどちらを選ぶべきか?
オーディオテクニカの人気ラインナップである「AT2040」と「AT2040USB」は、外観こそ似ていますが、その中身と「誰が使うべきか」という着地点は明確に異なります。結論から言えば、「手持ちの機材環境」と「どこまで音作りに手間をかけられるか」の2点で選ぶのが正解です。
まずは、あなたがどちらを選ぶべきか一目で判断できるチェックリストを提示します。
AT2040(XLRモデル)を選ぶべき人
- すでにヤマハ AG03mk2などのオーディオインターフェースを所有している
- 将来的に高級なプリアンプやミキサーを導入し、音質を追求したい
- 配信デスクの上をシンプルな機材(スイッチ類のないマイク)で統一したい
- マイク本体の故障リスクを最小限に抑えたい(電子回路が少ないため長寿命)
AT2040USB(USBモデル)を選ぶべき人
- パソコンやiPadに直接接続して、3分以内に高音質な配信を始めたい
- 配信中に「手元で素早くミュート」できる物理的な安心感が欲しい
- 自分の声を遅延なく聴ける「ダイレクトモニタリング」機能が必須
- オーディオインターフェースを追加で購入する予算や設置スペースがない
AT2040 vs AT2040USB スペック徹底比較表
両モデルのスペック差を数値で正確に把握しましょう。特に「感度」や「サンプリングレート」の違いは、実際の使用感に直結する重要なポイントです。
| 項目 | AT2040 (XLR) | AT2040USB |
|---|---|---|
| 型式 | ダイナミック型 | ダイナミック型 |
| 指向特性 | ハイパーカーディオイド | ハイパーカーディオイド |
| 接続端子 | XLR-M(3ピン) | USB Type-C |
| 周波数特性 | 80 - 16,000 Hz | 80 - 16,000 Hz |
| 感度 | -53 dB (2.2mV) (0dB=1V/Pa, 1kHz) | -48 dBFS/Pa (1kHz, at Max Gain) |
| ビット深度 | 機器(インターフェース)に依存 | 16bit / 24bit |
| サンプリング周波数 | 機器に依存 | 44.1 / 48 / 88.2 / 96 kHz |
| ヘッドホン出力 | なし | 77 mW (at 1kHz, 32Ω) |
| 本体コントロール | なし | ミュートタッチセンサー、音量調整ダイヤル |
| 質量 | 約 631 g | 約 600 g |
| 付属品 | マウンティングクランプ(AT8487)、変換ネジ | USBケーブル(C-A)、USB変換アダプタ、マウンティングクランプ |
徹底解説:AT2040とAT2040USBの決定的な「5つの違い」
一見すると接続端子が違うだけのように見えますが、AT2040USBには「USBマイクならではの付加価値」が凝縮されています。それぞれの項目を深く掘り下げてみましょう。
1. 接続方式と「オーディオインターフェース」の要否
もっとも大きな違いは、音の信号をデジタル化する「場所」です。
- AT2040(XLRモデル): アナログ信号のまま出力されます。そのため、PCに接続するには「オーディオインターフェース」という別売りの機材が必須です。この場合、音質はインターフェース側の性能(マイクプリアンプの質)に大きく左右されます。
- AT2040USB: マイク本体の中に、アナログ音声をデジタルに変換する高品質な「A/Dコンバーター」が内蔵されています。付属のUSBケーブルをPCのポートに差し込むだけで、OS側が自動的にサウンドデバイスとして認識します。
2. 本体コントロール機能の有無(ミュート・ボリューム)
配信中、咄嗟に咳が出そうになったり、家族に話しかけられたりした際に便利なのがコントロール機能です。
- AT2040(XLR): マイク本体には一切のボタンがありません。ミュートしたい場合は、接続しているミキサーやOBS(配信ソフト)側で操作する必要があります。
- AT2040USB: 本体背面に「静電容量式のミュートセンサー」を搭載しています。物理スイッチのように「カチッ」という操作音が入ることなく、軽く触れるだけで消音可能です。さらに、PCからの音と自分の声のバランスを調整する「ミキサー調整ダイヤル」も備えています。
3. ダイレクトモニタリング機能(ヘッドホン端子)
自分の声がどう聞こえているかを確認する「モニタリング」の質が、トークのしやすさを決めます。
- AT2040USB専用機能: 本体底面に3.5mmステレオミニジャックを搭載。ここにヘッドホンを繋げば、PCを経由しない「遅延ゼロ」の音声を聴くことができます。PC側で加工された音を聴くと、数ミリ秒の遅延(レイテンシ)が発生し、喋りづらさを感じることがありますが、AT2040USBはこの問題を物理的に解消しています。
4. A/Dコンバーターの解像度と音質の透明感
USBマイクの音質を左右するのが、サンプリングレートとビット深度です。
- 最大 24bit / 96kHz 対応: AT2040USBは、プロのレコーディング現場でも使われるハイレゾ級の解像度に対応しています。一般的なWeb会議ツール(Zoom等)では48kHzまでしか活かせないことが多いですが、YouTube動画のナレーション収録やPodcast制作においては、このスペックの高さが「音の厚み」や「編集時のノイズの少なさ」として現れます。
5. モニターLEDによるステータス可視化
視覚的なフィードバックも、配信ミスを防ぐ重要な要素です。
- LEDリングの役割: AT2040USBには、グリル内部にLEDが配置されています。通電時は「青色」、ミュート時は「赤色」に点灯します。これにより、「ミュートにしていたつもりが声が漏れていた」「ミュートを解除し忘れて一人で喋り続けていた」という、配信者にとって致命的なミスを視覚的に防止できます。
音質特性の深掘り:共通する「ハイパーカーディオイド」の強み
AT2040とAT2040USB、どちらを選んでも享受できるのがオーディオテクニカ独自の優れた音響設計です。
なぜ「単一指向性」よりも「ハイパーカーディオイド」なのか?
一般的な「単一指向性(カーディオイド)」は、マイクの正面180度近くを拾いますが、「ハイパーカーディオイド」はさらに範囲を絞り、正面約130度程度の音を集中的に拾います。これにより、以下のメリットが生まれます。
- キーボード音の低減: マイクの背後や横にあるキーボードの打鍵音が入りにくくなります。
- 部屋鳴りの抑制: 壁に反射した自分の声(エコー)を拾いにくくなるため、ナレーションが非常にタイトで聞き取りやすくなります。
内蔵ショックマウントとポップフィルターの効果
通常、ダイナミックマイクを使用する際は、振動ノイズを防ぐ「ショックマウント」と、パ行の破裂音(吹かれ)を防ぐ「ポップフィルター」を外付けするのが一般的です。しかし、AT2040シリーズはこれらを「内蔵」しています。
- 内蔵ショックマウント: マイクカプセル自体が特殊なラバー構造で浮いており、デスクを叩いた振動やマイクアームを動かした際の「ゴトッ」というノイズを吸収します。
- 内蔵ポップフィルター: グリル内部に2層のフォーム(ウインドスクリーン)が配置されています。これにより、別途大きなポップガードを顔の前に置く必要がなく、配信中の視認性(顔出し配信など)を確保できます。
ダイナミックマイク特有の「近接効果」
このマイクは、口元に近づければ近づけるほど、低音域が強調される「近接効果」を強く得られます。
- 活用例: マイクから 5 cm 程度の距離で喋ると、深夜ラジオのパーソナリティのような、深く、温かみのある声になります。
- 活用例: 逆に、スッキリした自然な声にしたい場合は 15 - 20 cm ほど離すことで、周波数バランスを調整できます。
比較検証:AT2040シリーズ vs 王道AT2020(コンデンサー)の違い
オーディオテクニカのベストセラー「AT2020」と迷っている方も多いでしょう。この2つの違いを理解せずに購入すると、「思っていたのと違う」という失敗に繋がります。
| 比較項目 | AT2040シリーズ (ダイナミック) | AT2020 (コンデンサー) |
|---|---|---|
| 得意な環境 | 防音のない自室、リビング | 防音室、静かな深夜の部屋 |
| 音の特徴 | 輪郭がはっきりした、力強い音 | 繊細でキラキラした、空気感のある音 |
| ノイズ耐性 | 非常に高い(周囲の音を拾いにくい) | 低い(遠くの音まで拾ってしまう) |
| 耐久性 | 衝撃や湿気に強く、扱いやすい | 振動や湿気に弱く、保管に注意が必要 |
| 推奨距離 | 3 - 15 cm (かなり近づける) | 15 - 30 cm (少し離す) |
結論: ゲーム実況やポッドキャストのように「喋り」がメインならAT2040、アコースティックギターの弾き語りや、静かな部屋での繊細な録音ならAT2020が適しています。
ケース別・最適な選択:あなたはどっち派?
「AT2040(XLR)」を選ぶべき人
このモデルは「機材を育てる楽しみ」を知っている人向けです。例えば、オーディオインターフェースに「Focusrite Scarlett」や「YAMAHA AGシリーズ」を使っている場合、そちらのファンタム電源を切った状態で接続します。将来的にプリアンプ(Cloudlifterなど)を買い足して、さらにノイズを減らしたプロ級のセッティングに移行できるのがXLR接続の醍醐味です。また、マイク本体に劣化する電子部品(DAC等)が少ないため、10年、20年と使い続けられる「道具」としての信頼性があります。
「AT2040USB」を選ぶべき人
このモデルは「現代のスマートな配信者」の標準装備です。専用の機材をデスクに並べたくない、設定に時間をかけたくない、しかし音質は妥協したくないというワガママを全て叶えます。特に、iPad(USB-C搭載モデル)でも動作するため、外出先やカフェでのノマド収録、あるいは寝室でのリラックスした配信にも最適です。本体のミュートボタン一つでプライバシーを守れる点は、テレワークがメインのビジネスマンにとっても大きなメリットです。
AT2040シリーズの性能を120%引き出す推奨アクセサリー
1. マイクアーム(必須級)
AT2040は約 631 g と、一般的なマイクよりも重量があります。安価なマイクアームでは自重で垂れ下がってくる可能性があるため、以下のモデルを推奨します。
- AT8700J / AT8703J: オーディオテクニカ純正のマイクアーム。AT2040の重量を計算に入れて設計されており、安定感は抜群です。
2. 専用ポップフィルター「AT8175」
内蔵ポップフィルターでも十分な性能ですが、より「パ行」の吹かれを完全に封じ込めたい場合は、外付けの専用ポップフィルター「AT8175」が用意されています。
- メリット: グリルにクリップで直接装着できるため、マイクアームを動かしても位置がズレません。デザインもマイク本体と完璧にマッチします。
3. オーディオインターフェース(AT2040用)
AT2040(XLR)を選ぶなら、ゲイン(増幅)の大きいインターフェースを選んでください。
- 推奨: YAMAHA AG03mk2 や Elgato Wave XLR。
- 注意点: ダイナミックマイクは出力が小さいため、安価なインターフェースでは音量を上げる際に「サーッ」というホワイトノイズが発生しやすいです。しっかりとしたプリアンプ性能を持つ機種を組み合わせましょう。
よくある質問(FAQ)
Q: AT2040USBをiPhoneで使えますか?
A: はい、可能です。USB-C搭載のiPhone 15シリーズ以降であれば直接、Lightning端子の旧モデルであれば「Apple Lightning - USB 3 カメラアダプタ」を介することで使用できます。ただし、電力供給が不安定な場合はセルフパワーのUSBハブが必要になることがあります。
Q: 歌ってみた(ボーカル録音)にも使えますか?
A: もちろん使えます。ただし、ダイナミックマイクはコンデンサーマイクに比べて高音域の繊細さが抑えられる傾向があります。ロックやパンク、ラップなど、力強く勢いのあるボーカルには非常に相性が良いですが、クラシックやウィスパーボイスの録音にはAT2020等のコンデンサー型の方が向いています。
Q: AT2040USBに専用のコントロールソフトはありますか?
A: 執筆時点では、PC側で細かなEQ(イコライザー)を調整するような専用ソフトは提供されていません。基本的にはOSの標準ドライバで動作し、本体のダイヤルとOBSなどの配信ソフト側で調整を行うスタイルです。
まとめ:失敗しないマイク選びのために
AT2040とAT2040USBの最大の違いは、接続の簡便さと本体機能の充実にあります。
- 「オーディオインターフェースを既に持っている、または買う予定がある」なら、将来的な拡張性が高い AT2040(XLR)。
- 「機材は最小限に、しかし利便性と高音質を両立したい」なら、ミュート機能とモニタリング機能が統合された AT2040USB。
どちらを選んだとしても、オーディオテクニカが誇る「ハイパーカーディオイド」の特性が、あなたの声を周囲の雑音から切り出し、リスナーの耳へとクリアに届けてくれるはずです。
配信の質を決めるのは、画質よりも「音質」です。聞き心地の良い声は、視聴者の滞在時間を延ばし、あなたのチャンネルや活動の信頼性を高める最大の武器になります。あなたのデスクに最適な一本を選び、最高の一歩を踏み出してください。


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