「CPUグリスって、本当に必要なの?もしかしていらないんじゃ…」 そんな疑問を一度は抱いたことがあるかもしれませんね。 特に自作PC初心者の方や、久しぶりにPCパーツに触れる方にとっては、この小さなチューブに入った物質の重要性はいまいちピンとこないかもしれません。
この記事では、そんなあなたの疑問に専門家の視点からハッキリとお答えします。 「CPUグリスはいらない」なんてとんでもない! むしろ**「絶対に必要」であり、PCの性能を最大限に引き出し、大切なパーツを長持ちさせるための縁の下の力持ち**なのです。 なぜなら、CPUとCPUクーラーという、見た目には平らに見える金属同士も、実はミクロのレベルでは完全に密着しておらず、熱伝導を妨げる空気の層が存在してしまうからです。 この「見えない壁」を埋めるのがCPUグリスの役割です。
なぜ必要なのか、どんな種類があって、どう選べば後悔しないのか、そして正しい塗り方まで、この記事を読めばCPUグリスに関する全てが分かります。 CPUグリスは、あなたのPCライフを快適かつ安全に保つための、小さくても非常に重要な投資です。 この記事が、あなたが後悔しない選択をするための一助となれば幸いです。
なぜCPUグリスは「絶対必要」なのか?その決定的理由

このセクションでは、CPUグリスが単なる推奨品ではなく、PCの心臓部であるCPUを保護し、性能を維持するための必須アイテムであることを、科学的な根拠と具体的な影響を交えて徹底解説します。
CPUの発熱と冷却の仕組み:グリスが果たす「橋渡し」の役割
CPUはPCの頭脳であり、複雑な計算処理を行う際に大量の電力を消費し、その結果として熱が発生します。 特に高負荷なゲームや動画編集などを行うと、CPU温度は70℃~80℃、時にはそれ以上に達することもあります。 このCPUの熱を吸収し、ヒートシンクやファンを使って外部に排熱することでCPUを冷却するのがCPUクーラーの重要な役割です。
しかし、CPUの表面(IHS: Integrated Heat Spreader)とCPUクーラーの接触面は、肉眼では平らに見えても、ミクロレベルでは無数の微細な凹凸が存在します。 これらの凹凸により、金属同士が完全に密着することはなく、間に目に見えない「空気の層」ができてしまいます。 まるで、どんなに平らなレンガを積み重ねても、わずかな隙間ができてしまうのと同じです。 空気は熱伝導率が非常に低いため、この空気層が熱の移動を著しく妨げ、CPUクーラーが本来の冷却性能を発揮できなくなるのです。 空気は断熱材としても使われるほど熱を伝えにくいため、この空気層はCPUにとって「見えない壁」となってしまいます。
ここで登場するのがCPUグリスです。 CPUグリスは、このCPUとCPUクーラーの間の微細な隙間を熱伝導性の高い物質で埋め、熱伝導率の低い空気を排除することで、CPUで発生した熱を効率的にCPUクーラーへと伝える「橋渡し」の役割を担います。 これにより、CPUクーラーは最大限の冷却性能を発揮できるようになるのです。
グリスなしは危険!PCに起こりうる深刻な事態
では、もしCPUグリスを塗らなかった場合、PCにはどのような影響が出るのでしょうか。 CPUグリスを塗布した場合としない場合では、CPU温度に歴然とした差が出ることが実証されています。 ある検証では、グリスなしの場合、CPU温度が10℃以上も高くなる結果が報告されています。 これはPCの安定動作にとって無視できない、非常に大きな差です。
CPUには、過度な高温による損傷を防ぐため、一定以上の温度に達すると自動的に動作クロックを下げて発熱を抑える「サーマルスロットリング」という保護機能が備わっています。 グリスなしでCPU温度が高止まりすると、このサーマルスロットリングが頻繁に作動し、PCの処理性能が大幅に低下します。 まるで、全力疾走したいのに足かせを付けられているような状態です。 せっかく高性能なCPUを搭載していても、その能力を全く活かせなくなってしまうのです。
さらに深刻なのは、高温状態が続くことによるPCへのダメージです。 PCが突然フリーズしたり、シャットダウンしたりする不安定な挙動を引き起こすことがあります。 そして最悪の場合、CPU自体やマザーボードなどの周辺パーツにダメージが蓄積し、故障の原因となったり、製品寿命を著しく縮めたりする可能性があるのです。 「CPUグリスをケチったばかりに、高価なCPUを壊してしまった…」そんな後悔は絶対にしたくないですよね。 PCが「なんだか最近遅いな」「よく固まるな」と感じる場合、それはCPUグリスの不在や劣化による静かな悲鳴かもしれません。
CPUグリスの種類と特徴:あなたのPCに最適なのはどれ?

CPUグリスと一口に言っても、様々な種類が存在します。 ここでは代表的なグリスの材質と、それぞれの特徴、メリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。 あなたのPC環境や使い方に最適なグリスを見つけるための第一歩です。
定番から高性能まで!主なCPUグリスの材質と性能比較
CPUグリスは、含有される素材によって熱伝導率や扱いやすさが異なります。
- シリコングリス:
- 特徴: 最も一般的で安価なタイプです。主成分はシリコンオイルで、扱いやすく、初心者にも安心の非導電性製品が多いのが特徴です。
- 性能: 熱伝導率は比較的低いものの、ネットサーフィンやオフィス作業など、CPU負荷の低い一般的な用途では十分な冷却性能を発揮します。
- 注意点: 潤滑剤として使われるシリコングリスと名称が同じなため、購入時には必ず「CPU用」であることを確認しましょう。
- シルバーグリス:
- 特徴: 微細な銀の粒子を含み、シリコングリスよりも高い熱伝導率を持つとされています。
- 性能: 安定した冷却性能を保ち、長時間のPC使用やある程度の負荷がかかる作業にも対応できます。
- 注意点: 銀は電気を通す導電性があるため、塗布時にはみ出してマザーボードの回路に付着するとショートの原因になる可能性があり、注意が必要です。ただし、最近では非導電性を謳う製品も増えてきています。
- ダイヤモンドグリス:
- 特徴: 人工ダイヤモンド粒子を配合し、金属系グリスよりもさらに高い熱伝導率を誇る高性能タイプです。
- 性能: Core i7以上の高性能CPUや、ゲーミング、動画編集といった高負荷作業に最適とされています。長期間安定した性能を維持し、固まりにくい製品が多いのも特徴です。
- コスト: 他の種類に比べて高価な傾向があります。
- セラミックグリス:
- 特徴: 酸化アルミニウムや窒化アルミニウムなどのセラミック粒子を含みます。非導電性であるため安全性が高いとされています。
- 性能: シルバーグリスとシリコングリスの中間程度の性能を持つものが多いと言われています。
- その他: 製品数は比較的少ない傾向にあります。
- 液体金属グリス:
- 特徴: ガリウムやインジウムなどの液体金属を主成分とし、他のグリスとは比較にならないほど圧倒的な熱伝導率を誇ります。
- 性能: オーバークロックなど、極限の冷却性能を求める上級者向けの特殊なグリスです。
- 注意点: 取り扱いが非常に難しく、上級者以外には推奨されません。導電性が極めて高いため、塗布に失敗すると即座にショートを引き起こす大きな危険性があります。また、アルミニウムを腐食させる性質があるため、CPUクーラーの材質を選ぶ必要があり、一般的には銅製ヒートシンクとの組み合わせが推奨されます。まさに「禁断の果実」と言えるでしょう。
- カーボンベースグリス:
- 特徴: ARCTIC社のMXシリーズなどが代表的で、炭素微粒子をベースとしています。高い熱伝導率と長期耐久性を両立させている製品が多いです。
- 性能: 高性能でありながら非導電性の製品が多く、扱いやすさと性能のバランスに優れています。
- その他: 経年劣化しにくく、長期間性能を維持すると謳う製品が多いのが特徴です。これにより、性能を求める一般ユーザーにとって、安全かつ高性能な選択肢として人気があります。
【表】CPUグリス種類別 特徴・熱伝導率・価格帯 早わかり比較
ここまでの情報をまとめた比較表で、各グリスの特徴を比べてみましょう。
種類 | 主な素材 | 熱伝導率目安 (W/mK) | メリット | デメリット | 主な用途 |
---|---|---|---|---|---|
シリコングリス | シリコンオイル | 1~5 | 安価、扱いやすい、非導電性 | 性能は控えめ | 一般事務、ネット閲覧 |
シルバーグリス | 銀粒子 | 5~10 | シリコンより高性能、安定性 | 導電性のものあり注意、シリコンより高価 | 軽いゲーム、動画編集 |
ダイヤモンドグリス | ダイヤモンド粒子 | 10~17 | 高性能、長寿命、固まりにくい | 高価 | 高負荷ゲーム、高性能CPU |
セラミックグリス | セラミック粒子 | 5~8 | 非導電性で安全 | 製品少なめ、性能は中程度 | 安全性重視 |
カーボンベースグリス | 炭素粒子 | 8~15+ | 性能と安全性のバランスが良い、長寿命 | 比較的高価な製品もあり | バランス重視、高性能志向 |
液体金グリス | ガリウム等 | 70+ | 究極の熱伝導性能 | 超高リスク、導電性、腐食性、塗布困難、上級者限定 | 極限オーバークロック(専門知識要) |
(注: 熱伝導率や価格帯は代表的な製品の目安であり、個々の製品によって異なります。)
後悔しないCPUグリスの選び方:5つの重要チェックポイント

グリスの種類を把握したら、次は具体的な製品を選ぶ際のチェックポイントです。 これらのポイントを押さえることで、あなたのPC環境と目的に最適な「後悔しない」グリス選びが可能になります。
1. 熱伝導率 (W/mK):冷却性能の最重要指標!数値が高いほど高性能
CPUグリスの冷却性能を示す最も基本的な指標が熱伝導率です。 これは、グリスがどれだけ効率よく熱を伝えるかを示す数値で、「W/mK(ワット・パー・メートル・ケルビン)」という単位で表されます。 この数値が高いほど、CPUの熱がクーラーに伝わりやすく、冷却性能が高いと言えます。
一般的な製品では2W/mKから15W/mK程度のものが多く、10W/mK以上あれば高性能な部類に入ると考えてよいでしょう。 特に高性能なCPUを使用している場合や、オーバークロック(CPUの定格を超えるクロック周波数で動作させること)を考えている場合は、この熱伝導率の数値を重視して選ぶことが重要です。 ただし、熱伝導率の測定条件はメーカーによって異なる場合があるため、あくまで目安の一つとして捉え、他の要素と総合的に判断することが賢明です。
2. 粘度と塗りやすさ:初心者でも失敗しないグリスとは?
グリスの**粘度(硬さ・柔らかさ)**は、塗りやすさに直結する重要な要素です。 粘度が低い(柔らかい)グリスは伸びやすく、CPU表面に均一に薄く塗り広げやすいため、初心者でも失敗しにくい傾向があります。 初めてグリスを塗る方や、作業に自信がない方は、柔らかめのグリスを選ぶと良いでしょう。
逆に粘度が高い(硬い)グリスは、均一に塗るのに多少のコツが必要な場合があります。 しかし、一度適切に塗布できれば、垂れにくかったり、長期間性能を維持したりするメリットがある製品も存在します。 製品によっては、グリスを塗り広げるための専用ヘラが付属しているものもあり、塗布作業を助けてくれます。 商品説明やユーザーレビューで「塗りやすい」「初心者向け」といったキーワードや、粘度に関する記述(例:低粘度、高粘度など)も参考にすると、自分に合った製品を見つけやすくなります。 最高の熱伝導率を謳う製品でも、うまく塗れなければその性能は発揮できません。特に初心者の方は、扱いやすさも重視しましょう。
3. 絶縁性(非導電性):万が一のショートを防ぐ安全な選択
CPUグリスには、電気を通す「導電性」のものと、電気を通さない「絶縁性(非導電性)」のものがあります。 特にシルバーグリスや液体金属グリスの一部は導電性を持つことがあります。 これらの導電性グリスが、塗布時や使用中にはみ出してマザーボードの精密な電子回路に付着してしまうと、ショート(短絡)を引き起こし、PCが故障するという重大なリスクがあります。
そのため、初心者の方や、安全性を最優先したい方は、必ず「絶縁性」または「非導電性」と明記されたグリスを選びましょう。 幸いなことに、最近では高い熱伝導率を持ちながらも安全な非導電性のグリスが多く登場しており、性能と安全性を両立した選択が可能です。 高価なPCパーツを不注意で壊してしまう「後悔」を避けるためにも、この点は非常に重要です。
4. 耐久性・寿命:どれくらい持つ?交換頻度は?
CPUグリスは一度塗れば永久に使えるわけではなく、時間とともに乾燥したり、成分が分離したりして劣化し、徐々に熱伝導性能が低下していきます。 製品によって耐久性は異なりますが、一般的に2~3年程度が交換の目安とされています。 中には、ARCTIC MX-4のように「8年間の持続性」を謳う非常に耐久性の高い製品も存在します。
PCの使用頻度や、ゲーミングや動画編集といったCPUに高い負荷がかかる作業の頻度によっても、グリスの劣化の進み具合は変わってきます。 高負荷な環境で長時間使用する場合は、目安よりも早めの交換を検討した方が良いでしょう。 「まだ大丈夫だろう」と油断せず、定期的なCPU温度のチェックを心がけることが、PCの健康を保つ秘訣です。 詳細は後述の「CPUグリスの寿命と交換時期」で詳しく解説します。
5. 容量と価格:コスパの良い製品を見極める
CPUグリスは、1g程度の少量タイプから、10g以上の大容量タイプまで様々な容量で販売されています。 1回の塗布に必要なグリスの量はごくわずかで、一般的には米粒1粒大、重さにして約0.1g程度と言われています。 そのため、個人ユーザーが自分のPC1台に使用するのであれば、1gから4g程度の製品で十分に数回は使用可能です。
価格は数百円から数千円と幅広く、一般的に熱伝導率が高い高性能なものほど高価になる傾向があります。 しかし、単純な価格の安さだけで選ぶのではなく、これまで見てきた熱伝導率、塗りやすさ(粘度)、絶縁性の有無、耐久性、そして内容量を総合的に比較し、自分の用途と予算に合ったコストパフォーマンスの良い製品を見極めることが重要です。 例えば、非常に安価でも塗りにくかったり、すぐに劣化してしまったりするグリスでは、結果的に手間や再購入のコストがかかり、「安物買いの銭失い」になりかねません。 付属品(ヘラやクリーナーの有無)も、トータルのコストパフォーマンスに影響する要素です。
【初心者でも安心】CPUグリスの正しい塗り方・塗り替え手順

適切なグリスを選んだら、次は正しい塗り方です。 難しそうに感じるかもしれませんが、ポイントを押さえれば初心者でも大丈夫。 ここでは、古いグリスの除去から新しいグリスの塗布、クーラーの取り付けまでをステップごとに丁寧に解説します。
準備するもの:これだけは揃えておこう
作業をスムーズに進めるために、以下のものを事前に準備しておきましょう。
- 新しいCPUグリス: これがなければ始まりませんね!
- クリーナー: 古いグリスを効率よく、かつ安全に拭き取るために使用します。**無水エタノール(イソプロピルアルコールとも呼ばれます)**が最も一般的に推奨されています。薬局などで手に入ります。専用のグリスクリーナーも市販されており、より確実に除去できます。
- 拭き取り材: グリスを拭き取る際に使用します。繊維が残りにくいものが理想的です。キムワイプ、コーヒーフィルター、マイクロファイバークロスなどが適しています。ティッシュペーパーは繊維がCPU表面に残りやすいため、できるだけ避けた方が無難です。
- ヘラ(スパチュラ): グリスを均一に伸ばす際に使います。多くのCPUグリスには塗布用の小さなヘラが付属しています。もし付属していなくても、薄いプラスチック製のカード(古いポイントカードなど)の角で代用することも可能です。
- (あれば便利) マスキングテープ: CPUのヒートスプレッダ(銀色の金属部分)の周囲をマスキングテープで保護することで、グリスが基板上にはみ出すのを防ぐことができます。特に粘度が低いグリスを使用する場合や、塗布に慣れていない方には有効な手段です。
- (あれば便利) 静電気防止手袋: PCパーツは静電気に弱いため、作業中の不意な故障を防ぐために着用するとより安全です。
ステップ1:古いグリスの除去と清掃
まず、PCケースを開け、CPUクーラーにアクセスできるようにします。
- 安全確保: PCの電源を完全に切り、コンセントから電源ケーブルを抜いてください。作業前にPCケースの金属部分に触れて、身体の静電気を放電しておくとより安全です。
- CPUクーラーの取り外し: CPUクーラーを固定しているネジやクリップを慎重に外します。CPUとクーラーがグリスで固着している場合があるため、無理に真上に引き抜こうとせず、少しずつ左右にひねるようにしてゆっくりと剥がすように取り外しましょう。勢いよく外すとCPUごとソケットから抜けてしまう「スッポン」現象が起き、CPUのピンを破損する危険性があるので特に注意が必要です。
- 古いグリスの拭き取り: CPUの表面(IHS)と、取り外したCPUクーラーの底面(CPUとの接触面)に残っている古いグリスを、クリーナー(無水エタノールなど)を染み込ませた拭き取り材で丁寧に拭き取ります。ゴシゴシ擦るのではなく、優しく溶かすように拭き取るのがコツです。グリスが硬化して取りにくい場合は、クリーナーを少し多めに含ませてしばらく置いてから拭くと取れやすくなります。
- 乾燥: 拭き取り後、CPU表面とクーラー底面が完全に乾燥していることを確認してから次のステップに進みます。アルコール分が残っていると、新しいグリスの性能に影響したり、ショートの原因になったりする可能性があります。
この際、CPUソケットの内部やマザーボード上に拭き取ったグリスのカスや液体が垂れたりしないように、細心の注意を払いましょう。
ステップ2:適切な量のグリスを塗布
清掃が終わったら、いよいよ新しいグリスを塗布します。ここで最も重要なのが塗布量です。
- 基本は「米粒1粒大」: CPUグリスの塗布量は、一般的に「米粒1粒大」または「豆粒大」が目安とされています。重さにして約0.1g程度です。
- 少なすぎると…: グリスの量が少なすぎると、CPUのヒートスプレッダ表面を十分にカバーできず、CPUクーラーとの間に隙間が残ってしまいます。これでは熱が効率的に伝わらず、冷却性能が大幅に低下します。
- 多すぎると…: 逆にグリスの量が多すぎると、CPUクーラーを圧着した際にはみ出してしまい、マザーボードを汚したり、最悪の場合は基板上の回路に付着してショートの原因になったりする危険性があります。また、グリスの層が厚くなりすぎると、グリス自体の熱抵抗が影響して逆に熱伝導効率が悪くなることもあります。まさに「過ぎたるは猶及ばざるが如し」です。
CPUのIHS(銀色の金属部分)の中央に、上記の量を注射器型容器の先から慎重に絞り出します。
ステップ3:グリスの伸ばし方(代表的な方法とコツ)
グリスをCPU表面に広げる方法にはいくつか代表的なものがあります。どの方法が良いかは長年議論がありますが、最終的に薄く均一に、気泡なく広がることが最も重要です。
- 中央一点置き(クーラー圧着法): CPUのIHSの中央に米粒大のグリスを置いた後、ヘラなどで意図的に伸ばさずに、そのままCPUクーラーを取り付けます。クーラーを固定する際の圧力でグリスが自然に均一に広がることを期待する方法です。Intelもこの方法を推奨しており、気泡が入りにくいとされています。特に初心者にとっては、ヘラで伸ばす際のムラや気泡の混入を避けられるため、比較的簡単な方法と言えるでしょう。
- ヘラやカードで薄く均一に伸ばす: CPU中央に出したグリスを、付属のヘラやプラスチックカードの端などを使って、CPUのIHS全体に薄く均一に塗り広げる方法です。目標は、クレジットカード1枚分程度の薄さです。この際、気泡が入らないように一方向にゆっくりと伸ばすのがコツです。厚塗りにならないように注意しましょう。
- その他の方法: 「X字(バッテン)塗り」や「5点置き」(中央と四隅に少量ずつ置く)など、CPUのIHS上の複数の点にグリスを少量ずつ置き、クーラーの圧力で広げる方法もあります。X字塗りは、特に正方形に近いIHSの場合、端までグリスが広がりやすいとされています。
どの方法を選ぶにしても、以下の重要なコツを意識してください:
- 薄く均一に: 最終的にグリスの層が可能な限り薄く、かつ均一になることが理想です。グリスはあくまでCPUとクーラーの間の「隙間を埋める」ものであり、グリス自体の層が厚いと熱伝導の妨げになります。
- はみ出し注意: IHSの端ギリギリまで塗ろうとすると、クーラーを圧着した際にはみ出しやすくなります。IHSの縁から1~2mm程度内側まで塗るように意識すると、はみ出しを抑えられます。心配な場合は、前述のマスキングテープでIHSの周囲を保護しておくと安心です。
- 気泡を絶対に入れない: グリス内に気泡が残ってしまうと、その部分が断熱層となり、冷却効率を著しく低下させる原因となります。ヘラで伸ばす場合は特に、気泡を巻き込まないように慎重に作業しましょう。
塗布作業は、文章で読むよりも実際の動画などを見るとイメージが掴みやすいでしょう。自信がない場合は、YouTubeなどで「CPUグリス 塗り方」と検索して、作業の様子を確認することをおすすめします。
ステップ4:CPUクーラーの取り付け
グリスを塗布したら、CPUクーラーをCPUの上に静かに、そしてまっすぐ下ろすように設置します。このとき、クーラーをグリグリと動かしたり、一度置いた後に持ち上げて置き直したりすると、グリスの均一性が損なわれたり気泡が入ったりする原因になるため避けましょう。
クーラーを固定する際は、ネジやクリップを対角線上にあるものから順番に、少しずつ均等に締めていくのが基本です。例えば4つのネジで固定するタイプなら、1つ目のネジを少し締めたら、その対角にあるネジを少し締める、次に残りの2つのネジも同様に対角の順で少しずつ締めていく、という作業を繰り返します。これにより、CPUクーラーからの圧力がCPU表面に均等にかかり、グリスが偏りなく適切に広がります。一箇所だけをいきなり強く締めすぎないように注意しましょう。
取り付け後、CPUクーラーがグラグラしていないか、マザーボードにしっかりと固定されているかを確認します。 もしグリスが少量IHSの縁からはみ出していた場合、使用しているグリスが非導電性であれば、そのままでも大きな問題になることは少ないです。しかし、見た目が気になる場合や、ホコリが付着する原因になることを避けたい場合は、アルコールを少量含ませた綿棒などで優しく拭き取ると良いでしょう。導電性のグリスがはみ出した場合は、ショートの危険性があるため、必ず丁寧に拭き取ってください。
CPUグリスの寿命と交換時期:いつ塗り替えるべき?

CPUグリスは消耗品です。 最高のPCパフォーマンスを長期間維持するためには、適切なタイミングでの塗り替えが不可欠です。 ここでは、グリス劣化のサインと、具体的な交換の目安について解説します。
グリス劣化のサイン:PCからのSOSを見逃すな!
CPUグリスが劣化してくると、PCは様々な形でSOSを発信し始めます。 これらのサインに早めに気づくことが、トラブルを未然に防ぐ鍵となります。
- CPU温度の明確な上昇: PCのアイドル時(何も操作していない状態)や高負荷時(ゲームや動画編集など)のCPU温度が、以前と比較して明らかに高くなっている場合、グリスが劣化して熱伝導効率が低下している可能性があります。専用のモニタリングソフトで確認した際に、数度から場合によっては十数度も温度が上昇していることもあります。
- CPUファンの回転数が上がりっぱなし・騒音が大きくなる: CPU温度が上昇すると、PCはCPUを冷やそうとしてCPUファンの回転数を上げます。グリスが劣化して冷却効率が落ちていると、ファンが常に高速で回転し続けるようになり、それに伴ってファンの騒音が以前よりも大きくなることがあります。
- PCの動作が不安定になる(フリーズ、突然のシャットダウンなど): CPUの温度が危険なレベルまで上昇すると、パフォーマンスの低下はもちろんのこと、突然PCがフリーズしたり、予期せずシャットダウンしたりする現象が頻発するようになることがあります。これはCPUの熱暴走(サーマルシャットダウン)が原因の一つとして考えられ、グリスの劣化がその引き金となっている可能性があります。
これらのサインは、グリスの劣化以外にも、PC内部のホコリの蓄積やCPUクーラーのファンの故障などが原因である可能性も考えられます。 しかし、グリスを長期間交換していない場合は、劣化を疑ってみる価値は十分にあります。
交換時期の目安:一般的には2~3年、使用状況で変わる
CPUグリスの寿命は、使用しているグリスの品質や種類、そしてPCの使用状況(CPUへの負荷の度合いや稼働時間など)によって大きく異なります。 しかし、一般的な目安としては、2~3年程度での塗り替えが推奨されています。
高品質なグリスの中には、例えばARCTIC社のMX-4のように「8年間の持続性」を謳っている製品もあります。 しかし、これはあくまで理想的な条件下での話であり、実際の使用環境ではもう少し短い期間で性能が低下し始めることも考慮しておいた方が良いでしょう。
特に、ゲーミングPCのようにCPUに高い負荷がかかる作業を日常的に長時間行う場合は、グリスの劣化が通常よりも早く進む可能性があります。 そのような場合は、1年~1年半程度での塗り替えを検討しても良いかもしれません。 CPUグリスは、時間の経過とともに徐々に乾燥したり硬化したりして、本来の柔軟性や密着性を失い、結果として熱伝導率が低下していきます。 PCのパフォーマンスを最適に保つためには、定期的な状態の確認と、適切なタイミングでのグリス交換が重要です。 CPU温度を定期的にモニタリングする習慣をつけると、グリス劣化の兆候を早期に捉えやすくなります。
CPUクーラー交換時や分解時は必ず塗り替えを
CPUクーラーを取り外したり、新しいものに交換したりする際には、古いCPUグリスは一度その役割を終えています。 たとえ短期間しか使用していなくても、CPUクーラーを一度取り外したら、CPU表面とクーラー接触面に残っている古いグリスは綺麗に拭き取り、必ず新しいグリスを塗り直しましょう。
一度剥がしたグリスをそのまま再利用しようとすると、グリスと金属面の間に気泡が混入したり、グリスの均一性が失われたりして、適切な冷却性能が得られなくなる可能性が非常に高いです。 「もったいない」と感じるかもしれませんが、ここはケチらずに新しいグリスを使用することが、確実な冷却性能を確保するための鉄則です。
おすすめCPUグリス5選!Amazonで買える人気製品を徹底比較

数あるCPUグリスの中から、性能、扱いやすさ、コストパフォーマンスなどを総合的に判断し、特におすすめできる製品を5つ厳選しました。 Amazon.co.jpで購入可能な人気製品を中心に、それぞれの特徴やレビューを詳しくご紹介します。 これらの情報が、あなたの「後悔しないCPUグリス選び」の助けとなることを願っています。
1. 親和産業 OC Master SMZ-01R (シミオシマスター)
- 主な特徴・スペック:
- ブランド名: 親和産業 (Shinwa Sangyo)
- 種類: メーカーサイトや製品情報では明確な分類は示されていませんが、高性能シリコン系またはカスタムブレンドの非導電性グリスと考えられます。
- 熱伝導率: 13.2W/m・K
- 容量: 1g、2g、10gなどのバリエーションがあります。
- 絶縁性: 非導電性
- 付属品: 製品によりますが、塗布用ヘラやクリーナーがセットになったキット(例: SMZ-TIMKIT-03P)も販売されています。
- 特徴: 日本のプロオーバークロッカー清水貴裕氏とのコラボレーションモデルとして知られ、抜群の塗りやすさと馴染みやすさ、そして高い熱伝導率を両立させています。
- Amazonレビュー評価の概要:
- 多くのユーザーから「非常に塗りやすく、伸びが良い」と高く評価されています。
- 冷却性能に関しても、「CPU温度が数度下がった」「安定して冷える」といった肯定的な報告が多数見られます。
- 初心者から経験豊富なオーバークロッカーまで、幅広い層から支持されている定番品の一つです。
- おすすめポイント: 高い熱伝導率と優れた塗りやすさを兼ね備えており、初心者から上級者まで幅広い層におすすめできる鉄板モデルと言えるでしょう。特に、確かな性能と扱いやすさのバランスを求めるならば、まず検討したい製品です。
- 参考価格: 2g版 ¥813 (2025年06月05日現在のAmazon.co.jpでの価格です。最新情報はAmazon.co.jpでご確認ください。)
2. ARCTIC MX-4 / MX-6
- 主な特徴・スペック:
- ブランド名: ARCTIC
- 種類: カーボンベースグリス
- 熱伝導率:
- MX-4: 8.5W/m・K
- MX-6: ARCTIC公式サイトでは具体的なW/mK値を前面に出さず、「MX-4と比較して熱抵抗が20%低い」と性能向上をアピールしています。一部の小売店情報では7.5W/mKとの記載も見られます。MX-6の熱伝導率については情報源により差異があるため、メーカーの性能向上主張を主軸に捉えるのが良いでしょう。
- 容量: 4g、8g、20gなど、多様なバリエーションが用意されています。
- 絶縁性: 非導電性
- 付属品: 4g版などには塗布用のスパチュラ(ヘラ)が付属する場合があります。
- 特徴: MX-4は長年の実績と高いコストパフォーマンス、そして「塗布後8年間の長期耐久性」を謳っているのが大きな特徴です。MX-6はMX-4の改良後継モデルとして登場し、さらなる低い熱抵抗と長期安定性を実現したとされています。どちらも塗りやすさが考慮されています。
- Amazonレビュー評価の概要:
- MX-4: 定番品としての信頼性が非常に高く、「よく冷える」「塗りやすい」「コストパフォーマンスが良い」といった好意的なレビューが大多数を占めています。
- MX-6: MX-4からの乗り換えで冷却性能の向上を実感する声がある一方で、初期の製品ロットでは「硬くて塗りにくい」という意見も散見されました。しかし、その後「New Formula」として配合が見直され、塗りやすさが改善されたとの情報もあります。
- おすすめポイント: MX-4は、実績とコストパフォーマンスで選ぶなら間違いのない定番中の定番です。長期間安心して使用したいユーザーにも適しています。MX-6は、MX-4からのステップアップとして、さらなる冷却性能と長期安定性を求めるユーザー向けの選択肢となります。どちらも非導電性なので、安心して使用できます。
- 参考価格: MX-4 4g版 ¥1,000前後、MX-6 4g版 ¥1,200前後 (2025年06月05日現在のAmazon.co.jpでの価格です。最新情報はAmazon.co.jpでご確認ください。)
3. アイネックス ナノダイヤモンドグリス JP-DX1 / JP-DX2
- 主な特徴・スペック:
- ブランド名: アイネックス (AINEX)
- 種類: ナノダイヤモンドグリス
- 熱伝導率:
- JP-DX1: 16W/m・K
- JP-DX2: 17W/m・K
- 容量: JP-DX1 3g、JP-DX2 3g
- 絶縁性: 非導電性
- 付属品: 塗布用ヘラが付属します。
- 特徴: 高純度のナノダイヤモンド粒子により、非常に高い熱伝導率を実現しています。JP-DX2はJP-DX1の進化版とされ、よりハードな使用環境にも適応すると謳われています。長期保存が可能で固化しにくいのも特徴です。
- Amazonレビュー評価の概要:
- 非常に高い冷却性能を評価する声が多く、「CPU温度が大幅に下がった」「期待以上の冷却効果」といったレビューが目立ちます。
- JP-DX1は、その高い性能に対してコストパフォーマンスも良いと評価されています。JP-DX2は、さらなる冷却性能を追求するユーザーに選ばれているようです。
- 塗りやすさについては、製品のロットや個人の感覚によって評価が分かれることもあるようですが、概ね良好との意見が多いです。
- おすすめポイント: とにかく高い熱伝導率を求めるユーザー、特に高発熱な最新CPUを使用している方や、オーバークロックを行う方におすすめです。非導電性でヘラも付属しており、高性能ながら扱いやすさも考慮されている点が魅力です。
- 参考価格: JP-DX1 3g版 ¥1,182、JP-DX2 3g版 ¥1,627 (2025年06月05日現在のAmazon.co.jpでの価格です。最新情報はAmazon.co.jpでご確認ください。)
4. Thermal Grizzly Kryonaut (サーマルグリズリー クライオノート)
- 主な特徴・スペック:
- ブランド名: Thermal Grizzly
- 種類: メーカーの記述では「特殊配合」とされており、シリコンフリーと記載されることもあります。公式サイトによると、主成分はナノアルミニウムと酸化亜鉛です。
- 熱伝導率: 12.5W/m・K
- 容量: 1g、1.5ml (約5.55g) など、複数のバリエーションがあります。
- 絶縁性: 非導電性
- 付属品: 塗布用のヘラ(アプリケーター)が付属します。
- 特徴: ドイツで開発された、オーバークロック用途を主眼に置いた高性能グリスです。極低温から高温(-250℃~350℃)まで安定した性能を発揮し、乾燥しにくく長期間性能を維持するとされています。
- Amazonレビュー評価の概要:
- オーバークロッカーやハイエンドPCユーザーからの評価が非常に高く、その冷却性能は折り紙付きです。「CPU/GPU温度を確実に下げてくれる」といった声が多数寄せられています。
- 粘度が高めで、やや塗りにくいと感じるユーザーもいるようですが、その圧倒的な性能を考えれば許容範囲という意見も多いです。
- 「Kryonaut Extreme」というさらに上位のモデルも存在します。
- おすすめポイント: 最高レベルの冷却性能を追求するオーバークロッカーや、PCの限界性能を引き出したいヘビーユーザー向けの製品です。価格は他のグリスと比較して高めですが、その投資に見合うだけの性能と信頼性があると評価されています。
- 参考価格: 1g版 ¥1,000~¥1,500程度 (2025年06月05日現在のAmazon.co.jpでの価格です。最新情報はAmazon.co.jpでご確認ください。)
5. SYY サーマルペースト (例: SYY-157)
- 主な特徴・スペック:
- ブランド名: SYY
- 種類: カーボンベース
- 熱伝導率: 15.7W/m・K (SYY-157の場合) ※製品の型番やバリエーションによって異なる場合があるため、購入時に確認が必要です。
- 容量: 2g、3g、4g、5gなど、多様な容量がラインナップされています。
- 絶縁性: 非導電性
- 付属品: 製品によっては、塗布用ヘラやクリーナーなどが付属する場合があります。
- 特徴: 非常に高い熱伝導率を謳いながら、比較的安価でコストパフォーマンスに優れている点が最大の特徴です。長期耐久性もアピールしており、例えばSYY-157では「塗布後、少なくとも5年間は効果が持続する」とされています。
- Amazonレビュー評価の概要:
- 「価格の割に非常によく冷える」「コストパフォーマンスが素晴らしい」といった高評価が目立ちます。予算を抑えつつ高い冷却性能を求めるユーザーに人気です。
- 塗りやすさについては、「塗りやすい」という意見と、「やや硬めだが問題ない範囲」という意見があり、総じて扱いやすいとの評価が多いようです。
- 付属品が充実している製品がある点も、ユーザーにとっては嬉しいポイントとなっています。
- おすすめポイント: 高い熱伝導率を低コストで実現したいユーザーに最適な選択肢の一つです。特に、予算を抑えつつもCPUの冷却性能には妥協したくないという場合に、有力な候補となるでしょう。
- 参考価格: 3g版 ¥600前後 (2025年06月05日現在のAmazon.co.jpでの価格です。最新情報はAmazon.co.jpでご確認ください。)
【比較表】おすすめCPUグリススペック一覧
ここまで紹介したおすすめのCPUグリスの主なスペックを一覧表にまとめました。製品選びの最終確認にご活用ください。
製品名 | ブランド | 種類 (主な素材) | 熱伝導率 (W/mK) | 容量例 | 絶縁性 (非導電性) | ヘラ付属 | 参考価格帯 (Amazon.co.jp 2025/06/05時点) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
親和産業 OC Master SMZ-01R | 親和産業 | 高性能シリコン系またはカスタムブレンド | 13.2 | 2g | 〇 | 製品による | ¥800~¥900 (2g) |
ARCTIC MX-6 | ARCTIC | カーボンベース | 7.5 (※1) | 4g | 〇 | 〇 (製品による) | ¥1,100~¥1,500 (4g) |
アイネックス ナノダイヤモンドグリス JP-DX2 | アイネックス | ナノダイヤモンド | 17 | 3g | 〇 | 〇 | ¥1,600~¥1,800 (3g) |
Thermal Grizzly Kryonaut | Thermal Grizzly | 特殊配合 (ナノアルミニウム、酸化亜鉛) | 12.5 | 1g | 〇 | 〇 | ¥1,000~¥1,500 (1g) |
SYY サーマルペースト SYY-157 | SYY | カーボンベース | 15.7 | 3g | 〇 | 〇 (製品による) | ¥500~¥700 (3g) |
(※1: ARCTIC MX-6の熱伝導率はメーカー非公表(熱抵抗で性能表示)。7.5W/mKは一部小売店情報。MX-4は8.5W/mK)
まとめ:CPUグリスはPC愛護の第一歩!賢い選択で快適PCライフを

本記事を通じて、CPUグリスが決して「いらない」ものではなく、お使いのPCの性能維持と長寿命化のために**「絶対必要」なパーツであることをご理解いただけたかと思います。 CPUとCPUクーラーの間の目に見えない微細な隙間を埋め、CPUで発生した熱を効率的にCPUクーラーへと伝えるCPUグリスは、まさにPCの安定動作を陰で支える縁の下の力持ち**です。
CPUグリス選びの重要なポイント(熱伝導率、塗りやすさ、絶縁性、耐久性、価格)と、本記事で解説した正しい塗り方を実践すれば、CPUの過熱による性能低下や熱暴走を防ぎ、あなたのPCは常に最高のパフォーマンスを発揮してくれるはずです。 それは、より快適なゲーム体験、よりスムーズな動画編集、そしてより安定した日常作業へと繋がります。
CPUグリスの定期的な状態チェックと、一般的に2~3年ごとの塗り替えは、大切なPCを長く快適に使い続けるための、簡単かつ効果的なメンテナンス作業です。 この一手間を惜しまないことが、結果的に高価なPCパーツを守り、予期せぬトラブルや出費を防ぐことに繋がるのです。
この記事で紹介した情報やおすすめ製品が、あなたの「後悔しないCPUグリス選び」の一助となれば幸いです。 さあ、あなたのPCに最適なCPUグリスを選んで、より安全で快適なPCライフを送りましょう!
FAQ:CPUグリスに関するよくある質問
最後に、CPUグリスに関して多くの方が抱く疑問とその回答をまとめました。
Q1: CPUグリスを塗らないと、すぐにPCは壊れますか? A1: 必ずしもすぐに壊れるとは限りませんが、CPUの温度が著しく上昇し、性能が大幅に低下する「サーマルスロットリング」が頻発します。これは、CPUが自己保護のために動作速度を落とす現象です。長期的にはCPU本体やマザーボードなどの周辺部品の寿命を縮め、突然のシャットダウンや起動不良といった故障のリスクが高まります。特に高性能なCPUほど発熱が大きいため、グリスなしの影響はより深刻になります。
Q2: CPUグリスはどれくらいの頻度で塗り替えるべきですか? A2: 一般的には2~3年が目安とされています。ただし、これはあくまで目安であり、PCの使用頻度、CPUへの負荷の大きさ、使用しているグリスの種類や品質によって劣化の進み具合は異なります。CPUの温度が以前よりも明らかに高くなったり、冷却ファンの音が大きくなったりしたら、それはグリス劣化のサインかもしれません。定期的な温度チェックをおすすめします。
Q3: 高いグリスと安いグリス、性能はどれくらい違いますか? A3: 主な違いは熱伝導率です。一般的に、高性能な(そして高価な)グリスは熱伝導率が高く、CPUの熱をより効率的にCPUクーラーへ伝えることができるため、CPU温度をより効果的に下げることができます。一般的なウェブ閲覧やオフィスソフトの使用程度であれば、安価なシリコングリスでも十分な場合があります。しかし、ゲーミングPCや動画編集用PCなど、CPUに高い負荷がかかる作業を頻繁に行う場合は、高性能グリスの方が数度から、場合によっては十数度の温度差となって現れ、PC全体の性能の安定性に大きく貢献します。ご自身のPCの用途と予算に合わせて最適なものを選ぶことが大切です。
Q4: CPUグリスの代わりに歯磨き粉や他のもので代用できますか? A4: 絶対にやめてください。 インターネット上では面白半分で試すような情報も見受けられますが、歯磨き粉やその他の家庭用品は、CPUグリスとは成分も熱伝導特性も全く異なります。一時的に熱が伝わるように見えたとしても、すぐに乾燥・変質して冷却効果を失うだけでなく、含有成分によってはCPUやマザーボードの金属部分を腐食させたり、電気を通す性質があればショートさせたりして、PCに深刻な、そして回復不能なダメージを与える原因となります。必ず専用のCPUグリスを使用してください。
Q5: リテールクーラー(CPU購入時に付属してくるクーラー)に最初から塗ってあるグリスは使っても大丈夫? A5: はい、問題なく使用できます。CPUメーカーがあらかじめリテールクーラーに塗布しているグリスは、そのCPUの定格動作において十分な冷却性能を発揮できるように選ばれています。そのため、別途グリスを購入しなくても、そのまま取り付けて使用して大丈夫です。ただし、より高い冷却性能を求める場合(例えば、静音化のためにより大型のクーラーに交換する、軽いオーバークロックを試すなど)や、数年経過してグリスが劣化した際の塗り替え時には、市販の高性能なグリスを選ぶことで、さらなる温度低下や性能向上が期待できることもあります。
Q6: CPUグリスがはみ出してマザーボードに付いてしまいました。大丈夫ですか? A6: まず、使用しているグリスが非導電性(絶縁性)であるかを確認してください。最近の多くの高性能グリスは非導電性です。非導電性のグリスであれば、少量のはみ出しがマザーボードの回路部分に付着しても、直ちにショートして故障するというリスクは低いです。しかし、見た目が良くありませんし、ホコリが付着しやすくなる原因にもなるため、可能であれば無水エタノールなどを少量含ませた綿棒やキムワイプなどで優しく拭き取ることをお勧めします。もし導電性のグリス(一部のシルバーグリスや液体金属グリスなど)が回路部分に付着した場合は、ショートの危険性が高いため、PCの電源を入れずに直ちに丁寧に拭き取り、不安な場合は専門家に見てもらうことを検討してください。
Q7: CPUグリスの「慣らし運転」や「バーンイン」は必要ですか? A7: 多くの現代の高品質なCPUグリス、例えばARCTIC社のMXシリーズなどは、塗布後すぐに最大限の性能を発揮するように設計されており、特別な慣らし運転(バーンイン期間)は不要とされています。ただし、製品によっては、グリスがCPUとクーラーの微細な凹凸に完全に行き渡り、最適な熱伝導効率に達するまでに若干の時間(数時間から数日の負荷運転)を要すると説明されているものも過去にはありました。基本的には、使用するCPUグリスの製品説明やメーカーの指示に従うのが最も確実です。特に指示がなければ、塗布後すぐに通常通り使用して問題ありません。
参考文献
この記事を執筆するにあたり、主要な論拠やデータとして実際に参照した情報源を以下にリストアップします。(アクセス日:2025年06月05日)
公式情報・メーカーサイト
- Intel Corporation
- ARCTIC
- ARCTIC Japan 公式サイト (MX-4, MX-6に関する直接のFAQページは見つかりませんでしたが、公式サイトのトップページです)
- Thermal Grizzly
- サーマルペースト製品情報 (Kryonaut, Hydronautを含む製品情報です)
- ドスパラ
PCパーツ・レビュー関連サイト
- アプライドネット
- Zisalog
- Linklighthub
- AKIBA PC Hotline!
- マイベスト
- ミツモア
- ASCII.jp
- Eyesmart
ECサイト商品ページ・レビュー
- Amazon.co.jp (各CPUグリス製品ページ)
動画コンテンツ
- YouTube: CPUグリス検証・解説動画 (複数のチャンネル)
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