Windows 11への移行や新しいPCの購入を検討する際、「自分のPCのCPUはWindows 11に対応しているのだろうか?」「新しいWindows 11 PCにはどんなCPUが必要なのだろうか?」「最近話題のCopilot+ PCのCPU要件とは一体何なのだろうか?」といった疑問や不安を抱えている方も少なくないでしょう。
Windows OSは進化を続けており、特にWindows 11では、強化されたセキュリティ、向上したパフォーマンス、そしてAIを活用した新しい体験を実現するために、CPUに対しても新たな要求が生まれています。
この記事では、Windows 11のCPUに関するあらゆる情報を網羅的に解説します。 公式のシステム要件、互換性の確認方法、メーカー別の対応CPUリスト、非対応CPUで運用するリスク、そして2025年におけるゲーミング、業務、さらには最新のCopilot+機能まで、様々なニーズに合わせた最適なCPUの選び方、さらには一般的なCPUパフォーマンストラブルの解決策まで、専門家の視点から徹底的に掘り下げます。
本ガイドは、Microsoftの公式情報や専門家の分析に基づき、信頼性が高く実用的なアドバイスを提供することを目的としています。 この記事を読み進めることで、Windows 11への移行や新しいPC選びにおいて、情報に基づいた賢明な判断を下すための一助となるでしょう。 さあ、Windows 11とCPUの深遠な世界へ一緒に踏み出しましょう。
Windows 11が求めるCPUとは?公式システム要件を再確認

Windows 11を効果的かつ安全に実行するためにMicrosoftが公式に定めているCPU要件の基礎知識を理解することは不可欠です。 これには、基本的な動作要件と、AIによる高度な体験を実現するための新しい、より要求の高い仕様が含まれます。
最低限必要なCPUスペック:Microsoft公式情報
Microsoftが定めるWindows 11の最低システム要件の中で、CPUに関する項目は特に重要です。 まず、CPUは1GHz以上で動作し、2つ以上のコアを備えている必要があります。 しかし、これらのスペックを満たすだけでは十分ではなく、最も重要なのは、そのCPUがMicrosoftの承認済みCPUリストに掲載されていることです。 このリストへの掲載は、単なる処理速度だけでなく、特定の命令セット、セキュリティ機能、そしてドライバーの安定性といった要素がMicrosoftの検証プロセスにおいて考慮されていることを示唆しています。 これらは、一貫性のある安全なユーザーエクスペリエンスを保証するために不可欠です。
CPUのクロック速度やコア数は、製造時のプロセッサ設計に固有のものであり、一般的にCPU自体のアップグレード可能なコンポーネントとは見なされていません。 このため、既存システムのCPUや新しいシステムを選ぶ際のCPUは、Windows 11への適格性を左右する、より恒久的な要素となります。
CPU以外にも、Windows 11の互換性において密接に関連する他の重要な要件があります。 RAMは最低4GB、ストレージは64GB以上が必要です。 これらのコンポーネントは、一部のシステムではアップグレードによってWindows 11の要件を満たせる可能性がある点が、CPUとは異なります。
TPM 2.0とセキュアブート:CPU互換性の隠れた必須条件
Windows 11のCPU互換性を語る上で、プロセッサ自体の性能と同等、あるいはそれ以上に重要なのが、システム全体のセキュリティ基盤です。 具体的には、システムファームウェアがUEFI(Unified Extensible Firmware Interface)であり、セキュアブートに対応していること、そしてトラステッドプラットフォームモジュール(TPM)バージョン2.0が必須とされています。
これらはCPUの機能そのものではありませんが、CPUが連携して動作するマザーボードやシステムレベルの機能であり、Windows 11のインストールと安定した運用に不可欠です。 Microsoftがこれらの機能を必須とした背景には、OSの起動プロセスをマルウェアから保護し、プラットフォーム全体の信頼性を高めるという戦略的な意図があります。 これは単なる推奨機能ではなく、Windows 11のセキュリティをハードウェアレベルから強化するための核心的な要件と言えるでしょう。
たとえCPUが承認リストに載っていても、システムがこれらのTPM 2.0や適切なUEFI/セキュアブート機能を欠いていれば、Windows 11の互換性チェックをクリアできません。 つまり、Windows 11への対応可否は、CPU単体の問題ではなく、システム全体がこれらの広範なプラットフォームセキュリティ基準を満たしているかどうかにかかっているのです。 もしデバイスがこれらの要件を満たしていない場合でも、TPMやセキュアブートがBIOS/UEFI設定で有効化されていないだけであれば、Microsoftはそれらを有効化するためのガイダンスを提供しています。 このことは、これらの機能の重要性を一層強調しています。
コンポーネント | 仕様 |
---|---|
プロセッサ/CPU | 1GHz以上、2コア以上、Microsoftの承認済みCPUリストに記載されていること |
RAM | 4GB |
ストレージ | 64GB以上 |
システムファームウェア | UEFI、セキュアブート対応 |
TPM | トラステッドプラットフォームモジュール (TPM) バージョン2.0 |
通常版Windows 11とCopilot+ PCのCPU要件の違い
Windows 11のCPU要件は、基本的なエディションと、新たに登場したAI特化型の「Copilot+ PC」とで大きく異なります。
標準的なWindows 11では、前述の通り、互換性のある64ビットプロセッサまたはSoC(System on a Chip)上で、1GHz以上で動作する2コア以上のCPUが求められます。
一方、Copilot+ PCは、Windows 11のAI機能を最大限に活用するために設計された新しいクラスのPCです。 これらのPCのCPU要件は格段に厳しく、最も特徴的なのは**NPU(Neural Processing Unit:ニューラル処理ユニット)**の搭載です。 このNPUは、40TOPS(Trillion Operations Per Second:毎秒40兆回の演算)以上の処理能力を持つ必要があります。 このNPU要件は、AI処理をクラウドだけでなくデバイス上でも高速に実行するためのものであり、PCハードウェアにおける大きな転換点と言えます。
MicrosoftがCopilot+ PC向けに現在指定しているプロセッサシリーズは以下の通りです。
- AMD Ryzen™ AI 300 シリーズ
- Intel® Core™ Ultra 200V シリーズ
- Snapdragon® X シリーズ
これらのCPUは、単に高速であるだけでなく、AIワークロードを効率的に処理するための専用ハードウェアを内蔵している点が特徴です。 Copilot+ PCでは、CPU以外にも、16GBのDDR5/LPDDR5 RAM、256GBのSSD/UFSストレージといった、より高性能な周辺ハードウェアも要求されます。 これらの新しいハードウェア要件は、Copilot+ PC独自のAI体験を実現するために不可欠であり、Windows 11が提供する体験に明確な階層化と市場の細分化をもたらすことを示唆しています。「Copilot+ Ready」という表示は、今後PCを選ぶ際の重要な差別化要因となるでしょう。
コンポーネント | 仕様 |
---|---|
プロセッサ (NPU) | 40TOPS以上の処理能力を持つNPU。例: AMD Ryzen™ AI 300シリーズ, Intel® Core™ Ultra 200Vシリーズ, Snapdragon® Xシリーズ |
RAM | 16GB DDR5/LPDDR5 |
ストレージ | 256GB SSD/UFS |
お使いのCPUはWindows 11に対応?互換性をチェックする方法

お使いのPCがWindows 11の厳しいハードウェア要件、特にCPUの互換性を満たしているかを確認するための実践的な手順を解説します。
Microsoft公式「PC正常性チェックアプリ」の使い方
お使いのデバイスがWindows 11の要件を満たしているかを確認する最も簡単な方法は、Microsoftが提供する「PC正常性チェックアプリ」を使用することです。 このアプリは、ユーザーが自身のPCの互換性を簡単に自動評価できるようにするための、Microsoft推奨の手段です。
利用手順は以下の通りです。
- MicrosoftのウェブサイトからPC正常性チェックアプリをダウンロードし、インストールします。
- アプリを起動すると、「PC正常性の概要」という画面が表示されます。上部にある「Windows 11の概要」というボックス内の「今すぐ確認」ボタンをクリックします。
アプリはシステムをスキャンし、PCがWindows 11のシステム要件を満たしているかどうかを報告します。 互換性がない場合は、その理由と、詳細なサポート情報へのリンクが表示されます。 このアプリは、最初にリリースされた際にいくつかの問題を抱えていたため一時的に提供が停止されていましたが、現在は改善され、正常に機能しています。
また、ハードウェアを変更した後や、PC正常性チェックアプリとWindows Updateの設定画面での互換性情報が一致しない場合には、互換性評価を手動で更新する必要があります。 これには、タスクスケジューラを使用する方法と、管理者権限でコマンドプロンプトを使用する方法があります。 これは、PCのステータスが(例えば、ハードウェアのアップグレード後やBIOSでTPM/セキュアブートを有効にした後など)変化する可能性があることをシステムが認識し、再評価を行うための重要な機能です。
手動での互換性確認とCPUモデルリストの参照
PC正常性チェックアプリによる確認以外にも、Microsoftが公式に提供している対応プロセッサのリストを参照して、手動で互換性を確認する方法があります。 これらのリストは、特定のCPUモデルがサポートされているかどうかを確認するための最も詳細かつ正確な情報源です。
Microsoftは、Intel、AMD、Qualcommの各メーカーのCPUについて、それぞれ対応モデルのリストをMicrosoft Learnのページで公開しています。 まず、ご自身のPCに搭載されているCPUのモデル名(タスクマネージャーの「パフォーマンス」タブやシステム情報で確認可能)を特定し、該当するメーカーのリストと照合します。
これらの公式リストは定期的に更新されますが、CPUメーカーによる最新モデルの発表からリストへの反映までに時間がかかる場合がある点に注意が必要です。 例えば、AMDコミュニティでは、新しいAMD Ryzen 5500GT/5600GTがAMDによってWindows 11対応と発表されたものの、Microsoftのリストにはまだ掲載されていなかった事例が報告されています。 これは、最新CPUを検討しているユーザーにとっては、一時的にメーカーの発表を信頼するか、リスト更新を待つ必要があることを意味します。
なお、技術的には非対応のハードウェアに手動でWindows 11をインストールする場合(非推奨)、CPUの絶対最小要件は1GHz(64ビット)で2コア以上とされていますが、これには後述する重大なリスクが伴います。
Windows 11対応CPUメーカー別リスト:Intel・AMD・Qualcomm

主要なCPUメーカーであるIntel、AMD、QualcommのどのプロセッサファミリーがWindows 11に対応しているのか、その概要を解説します。 完全な詳細については、必ずMicrosoftの公式リストを参照してください。ここでの目的は、どの世代やシリーズが一般的にサポートされているかを理解することです。
Intel対応CPU:Core iシリーズから最新Core Ultraまで
Intel製CPUについては、一般的にIntel第8世代Coreプロセッサ以降がWindows 11のサポート対象となっています。 例えば、第7世代のCore i5-7300HQを搭載したPCはサポート対象外であるとの報告があり、これが第8世代以降という一般的な区切りを示唆しています。 Microsoftの公式情報でも、Windows 11 バージョン24H2において、第8世代、第9世代、第10世代の一部のCPUがサポート対象として再分類されたことが確認されています。
サポートされる主なファミリーには、Core i3、i5、i7、i9の各シリーズに加え、新しいCore Ultraシリーズ、そして特定のモデルに限定されますがXeon、Pentium、Celeron、Atomも含まれます。 Microsoftが公開しているWindows 11 24H2対応のIntel CPUリストは非常に広範で、多数の特定モデルが掲載されています。 このリストは、セキュリティ、信頼性、そしてWindows 11の最小システム要件という設計原則を満たすプロセッサモデルを示しています。
重要な点として、リストに明示的に記載されていなくても、将来リリースされる世代のプロセッサがこれらの同じ設計原則を満たしていれば、サポート対象と見なされるとされています。 しかし、Intelは非常に広範なCPUファミリーを展開しているため、「Core i5なら何でも大丈夫」といった安易な判断は禁物です。ユーザーは、所有または検討しているCPUの正確なモデル番号を公式リストで確認する必要があります。
詳細な対応Intel CPUリストは、Microsoft Learnの公式ページで確認してください。
AMD対応CPU:Ryzenシリーズを中心に解説
AMD製CPUでは、一般的にデスクトップ向けにはAMD Ryzen 2000シリーズ(Zen+アーキテクチャ)以降がWindows 11のサポート対象とされています。 コミュニティからの情報では「AMD Zen+以降の全プロセッサが互換性あり」との見方もありますが、公式にはモデルごとの指定となります。 モバイル向けでは、Athlon、EPYC、そして新しいRyzen Mobileプロセッサの多くもリストに含まれています。
主要な対応ファミリーとしては、Ryzen 3、5、7、9(2000、3000、4000、5000、6000、7000シリーズなど様々な世代を含む)、Ryzen PRO、Threadripper PRO、そして特定のAthlonやEPYCモデルが挙げられます。 特に、Copilot+ PC向けにはRyzen AI PRO 300シリーズが対応CPUとして名を連ねています。AMDはこのシリーズを「独自のAI体験」と「ビジネスおよび将来への対応」を可能にするものとして積極的に位置づけています。
AMDの新しいCPUが発表されてからMicrosoftの公式リストに掲載されるまでには、タイムラグが生じる可能性がある点に留意が必要です。 前述の通り、Ryzen 5500GT/5600GTがAMDによってWindows 11対応とされていても、一時的にMicrosoftのリストに載っていなかったケースがありました。 これは、AMDが自社製品のWindows 11互換性について積極的に情報を発信していることを示していますが、最終的な確認はMicrosoftの公式リストで行うのが賢明です。
詳細な対応AMD CPUリストは、Microsoft Learnの公式ページで確認してください。
Qualcomm対応CPU:Snapdragonシリーズの選択肢
Qualcomm製CPUは、主にWindows on Armデバイス向けに提供されており、Windows 11との互換性を持つSnapdragon SoC(System on a Chip)も増えています。 主な対応Snapdragon SoCには、Snapdragon 850、7cシリーズ(7c、7c Gen 2、7c+ Gen 3)、8c、8cxシリーズ(Gen 1、Gen 2、Gen 3)、そしてMicrosoftと共同開発されたSQ1、SQ2、SQ3が含まれます。
特に注目すべきは、Copilot+ PC向けに指定されているSnapdragon Xシリーズです。 これらのプロセッサは、長時間のバッテリー駆動、常時接続といった従来のWindows on Armデバイスの利点に加え、高性能なAI処理能力を提供します。 Windows on Armエコシステムは成熟しつつあり、例えば人気のカスタマイズツールであるWindhawkがArm版Windows 11をサポート開始するなど、ソフトウェアの互換性も向上しています。
IntelやAMDと同様に、Qualcomm製CPUについても、将来リリースされる世代のプロセッサがセキュリティ、信頼性、最小システム要件といった設計原則を満たしていれば、リストに明示的に記載されていなくてもサポート対象と見なされる方針です。
詳細な対応Qualcomm CPUリストは、Microsoft Learnの公式ページで確認してください。
非対応CPUでWindows 11を使い続けるリスクとは?

Microsoftが定めるシステム要件を満たさないCPUでWindows 11を使用することは、いくつかの重大なリスクを伴います。 このセクションでは、Microsoftの公式見解に基づき、非対応環境での運用がいかに危険であるかを明確に解説します。
Microsoftの公式見解とサポートポリシー
Microsoftは、最小システム要件を満たさないデバイスへのWindows 11のインストールを推奨していません。 これは単なる提案ではなく、同社の確固たるポリシーです。 もし適格でないハードウェアにWindows 11をインストールした場合、そのデバイスはMicrosoftからのサポートを受けられなくなります。
ユーザーは、互換性の問題が発生するリスクを自ら負うことを理解しておく必要があります。 実際、Microsoftは、非サポート対象のデバイスにWindows 11をインストールした場合は、Windows 10にロールバックすることを推奨しています。 非対応システムでは、デスクトップに透かし(ウォーターマーク)が表示されたり、設定アプリ内に要件未達を通知するメッセージが表示されたりすることがあります。 これらの視覚的な警告は、ユーザーがサポート対象外の状態で運用していることを常に意識させるためのものです。
セキュリティ更新と機能アップデートへの影響
非対応CPUでWindows 11を使用する最大のリスクは、セキュリティに関わるものです。 サポート対象外のデバイスは、セキュリティ更新プログラムを含む一切のアップデートを受け取る保証がありません。 これは、日々巧妙化するサイバー脅威に対して無防備な状態に置かれることを意味し、ユーザーの安全性とデータ保護に深刻な影響を及ぼします。
特に、Windows 10のサポートが2025年10月に終了することを考慮すると、この問題はより一層深刻です。 古いハードウェアを使用しているユーザーは、サポートが終了するWindows 10を使い続けるか、非対応のWindows 11へ危険なアップグレードを行うか、あるいは新しいハードウェアに投資するかの難しい選択を迫られます。 非対応のWindows 11では更新プログラムの保証がないため、セキュリティの観点からは非常に危険な選択肢となります。
パフォーマンス低下や互換性の問題の可能性
アップデートの問題に加え、非対応CPUでWindows 11を実行すると、システム要件を満たさないデバイスは互換性やその他の問題により誤動作する可能性があります。 これは、システムの不安定化、ドライバの問題、特定の機能が正しく動作しないといった形で現れることがあります。 つまり、日常的なPCの使い勝手や安定性が損なわれる恐れがあるのです。
さらに、Microsoftの警告によれば、互換性のないOS構成で運用している場合、ハードウェアの製造元保証の対象外となる可能性も指摘されています。 これは、ハードウェアに問題が発生した際に、修理や交換といったサポートを受けられなくなるという金銭的なリスクも伴うことを意味します。
【2025年版】Windows 11に最適なCPUの選び方:目的別おすすめモデル

Windows 11搭載PCの性能を最大限に引き出すためには、用途に合ったCPUを選ぶことが不可欠です。 ここでは、2025年5月現在の専門家の評価(PCMag誌の2025年5月13日付記事など)を基に、様々な利用シーンに合わせたおすすめのCPUモデルを紹介します。
カテゴリ | AMD推奨モデル (主な理由) | Intel推奨モデル (主な理由) | Qualcomm推奨モデル (主な理由) |
---|---|---|---|
日常作業・オフィス向け | AMD Ryzen 5 7600 (価格に対する性能が非常に高く、コストパフォーマンスに優れる。6コア12スレッド、最大5.1GHz、クーラー付属) | Intel Core i5-13400F (価格あたりの性能が高く、コア数も多い。dGPUとの組み合わせでミドルレンジゲーミングにも対応) または Intel Core i5-12600K (予算重視で内蔵GPUが必要な場合に最適。オフィス作業やマルチタスクに十分な性能、低価格) | N/A |
ゲーミングPC向け | AMD Ryzen 9 9950X3D (3D V-Cache技術により卓越したゲーミング性能。16コア、最大5.7GHz) <br> 予算重視: AMD Ryzen 7 5700X (AM4プラットフォームで依然として高いコストパフォーマンスを誇るゲーミングCPU) | Intel Core i7-14700K (全体的に非常に高い性能。20コア、キャッシュ増量、優れたゲーミング性能に加え、配信や録画にも強い) | N/A |
クリエイティブ・高負荷 | AMD Ryzen 9 9950X (AMDの最速コンシューマ向けCPU。16コア32スレッド、Zen 5アーキテクチャ、CPU集約型タスクに最適) <br> HEDT: AMD Ryzen Threadripper 7970X (32コア64スレッド、極端なマルチタスクや高度な処理向け) | Intel Core Ultra 9 285K (8Pコア+16Eコア、低消費電力化、高性能内蔵GPU、専用AIシリコン搭載。コンテンツ制作で最高レベルの性能) | N/A |
将来性・AI機能重視 | AMD Ryzen™ AI 300 シリーズ (Copilot+ PC対応、高性能NPU搭載で将来のAI機能に対応) | Intel® Core™ Ultra 200V シリーズ (Copilot+ PC対応、高性能NPU搭載で将来のAI機能に対応) | Snapdragon® X シリーズ (Copilot+ PC対応、特にモバイルデバイスでのAI機能と電力効率に優れる) |
日常作業・オフィス向け:コスパ重視のCPU選び
ウェブブラウジング、オフィスアプリケーションの利用、メディアコンテンツの視聴といった日常的な作業やオフィス業務には、過度な出費を抑えつつ十分な性能を発揮するCPUが求められます。 このセグメントでは、コストパフォーマンスが最も重要な選択基準となります。
AMD製CPUでは、AMD Ryzen 5 7600が推奨されます。 このCPUは、価格に対して非常に優れた性能を提供し、6コア12スレッド、最大5.1GHzのクロック速度を誇ります。さらに、標準でクーラーが付属している点も魅力です。
Intel製CPUでは、Intel Core i5-13400Fが優れた選択肢です。 価格あたりの性能が高く、この価格帯としてはコア数も多いため、専用グラフィックカードと組み合わせればミドルレンジのゲーミングにも対応可能です。 より予算を抑えたい場合や、内蔵グラフィックス機能が必要な場合は、Intel Core i5-12600Kも依然として有力な候補です。 オフィス作業やマルチタスクには十分な性能を持ち、価格も手頃で、Intel UHD Graphics 770を内蔵しています。
ゲーミングを主目的としないオフィスPCでは、CPUに内蔵されたグラフィックス機能(Intelの非FモデルやAMDのAPUなど)を活用することで、別途グラフィックカードを購入する必要がなくなり、コストを大幅に削減できます。
ゲーミングPC向け:高性能CPUで快適プレイ
最新のグラフィックカードの性能を最大限に引き出し、高フレームレートで快適なゲーミング体験を実現するためには、ボトルネックとならない高性能なCPUが不可欠です。
AMD製CPUでは、AMD Ryzen 9 9950X3Dがゲーミングにおける最高の選択肢として推奨されています。 このCPUは、AMD独自の3D V-Cache技術によりL3キャッシュを大幅に増量し、ゲームのフレームレートを顕著に向上させます。16コアを搭載し、最大5.7GHzで動作します。 より予算を抑えたいゲーマーには、AMD Ryzen 7 5700Xも依然として強力な選択肢です。AM4プラットフォームは旧世代ですが、このCPUは優れた性能と価値を提供し続けています。
Intel製CPUでは、Intel Core i7-14700Kがゲーミング向けとして高く評価されています。 このCPUは20コアを搭載し、キャッシュも増量されており、あらゆる面で卓越した性能を発揮します。特にゲーミング性能は非常に高く、ゲームプレイの配信や録画といった同時作業にも十分なパワーを提供します。 このようなCPUは、ゲーム内の物理演算やAI処理、高フレームレートの維持といったCPU負荷の高い処理をスムーズにこなし、GPUがその性能を存分に発揮できるようにします。 一般的にゲーミングではGPUの性能が最も重要視されますが、そのGPUに十分なデータを供給できるだけのCPU性能もまた、快適なプレイには欠かせません。
クリエイティブ作業・高負荷処理向け:プロフェッショナルCPU
動画編集、3Dレンダリング、ソフトウェアコンパイルといったクリエイティブ作業や専門的な高負荷処理には、多数のコアとスレッドを備え、強力なマルチスレッド性能を持つCPUが求められます。 これらの作業は、並列処理能力が高いほど効率が向上する傾向にあります。
AMD製CPUでは、AMD Ryzen 9 9950Xがコンシューマ向け最速モデルとして推奨されます。 16コア32スレッド、最大5.7GHzのクロック速度を誇り、最新のZen 5マイクロアーキテクチャを採用することで、前世代よりも低い発熱で高い性能を実現しています。CPU集約型のタスクに最適です。 さらに極端な要求に応えるためには、HEDT(ハイエンドデスクトップ)向けのAMD Ryzen Threadripper 7970Xがあります。32コア64スレッドという圧倒的な処理能力で、複数の要求の厳しいアプリケーションを同時に扱うような極端なマルチタスクや、高度にスレッド化されたプログラムで真価を発揮します。
Intel製CPUでは、Intel Core Ultra 9 285Kがハイエンドモデルとして推奨されます。 8つの高性能Pコアと16の効率的なEコアを組み合わせ、前世代を上回る性能向上と低消費電力を両立しています。改良された内蔵GPUに加え、専用のAIシリコンも搭載しており、コンテンツ制作において最高レベルのパフォーマンスを提供します。 Intel Core Ultra 9 285KのようなCPUに搭載された「専用AIシリコン」は、AIアクセラレーションがクリエイティブアプリケーション(AIによるフィルター処理、コンテンツに応じた塗りつぶし、生成AIツールなど)でますます重要になる未来を示唆しており、この分野の性能評価基準を変える可能性があります。
将来性を見据えたCPU選び:Copilot+ PC対応モデルも視野に
新しいPCの長期的な価値と能力を最大限に高めたいユーザーにとって、CPUのNPU(Neural Processing Unit)性能、特にTOPS(Trillion Operations Per Second)値は、従来のCPUスペックと並んで重要な「将来性」の指標となりつつあります。 これは、Windows 11で今後展開されるAIを活用した機能、特に「Copilot+ PC」体験への対応を見据えたものです。
Copilot+ PCに対応するためには、CPUに40TOPS以上の処理能力を持つNPUが搭載されている必要があります。 現在、この要件を満たすCPUとして、AMD Ryzen™ AI 300シリーズ、Intel® Core™ Ultra 200Vシリーズ、そしてSnapdragon® Xシリーズが挙げられます。 AMDはRyzen AI PRO 300シリーズを「独自のAI体験」と「ビジネスおよび将来への対応」を可能にするものとして位置づけています。
これらのCPUを選択することは、たとえ全てのAI機能がすぐに利用可能でなかったり、完全に成熟していなかったりする場合でも、次世代のAI体験に備えることを意味します。 特に、新しいハイエンドノートPCの購入を検討しているユーザーや、最先端技術を求めるユーザーにとって、これらのCopilot+対応モデルは重要な選択肢となるでしょう。
ただし、Copilot+はCPUだけの問題ではなく、プラットフォーム全体の概念であることも理解しておく必要があります。 NPU搭載CPUに加えて、16GBのRAMと高速なSSDストレージも要求されます。 したがって、AI機能への将来対応は、プロセッサ単体だけでなく、システム全体を考慮して行う必要があります。
Windows 11でのCPUパフォーマンス:よくある問題と最適化のヒント

Windows 11環境でCPUに関連するパフォーマンスの問題が発生した場合の一般的な原因と、システムの快適性を維持するための最適化のヒントを紹介します。
CPU使用率が高い?原因と対処法
Windows 11でCPU使用率が異常に高くなる現象は、様々な原因によって引き起こされる可能性があります。 まず、CPU使用率を確認するには、タスクマネージャーを開き、「プロセス」タブでCPU列をクリックして使用率の高い順に並べ替えます。
一般的な原因:
- 多数のアプリの同時実行やバックグラウンドプロセス: 使用していないアプリがバックグラウンドで動作し続けると、CPUリソースを消費します。
- Windows Updateの動作または問題: 更新プログラムのダウンロードやインストール中にCPU使用率が上昇することがあります。また、更新プロセスで問題が発生している場合も同様です。
- ウイルス対策ソフトのスキャン: Windows Defenderやサードパーティ製のウイルス対策ソフトがバックグラウンドでスキャンを実行すると、CPU負荷が高まることがあります。
- SysMain (Superfetch) サービス: このサービスは頻繁に使用するアプリのデータを事前に読み込むことで起動を高速化しますが、時に過剰なCPU使用を引き起こすことがあります。
- マルウェアの感染: 不正なソフトウェアがバックグラウンドで動作し、CPUリソースを大量に消費している可能性があります。
- ディスクエラーやシステムファイルの破損: ストレージの問題やOSのシステムファイルが破損していると、CPUに余計な負荷がかかることがあります。
- CPUのオーバーヒート: CPUが過熱すると、性能を抑制して温度を下げようとするため、パフォーマンスが低下し、見かけ上CPU使用率が高く見えることがあります。
対処法:
- 不要なアプリの終了とPCの再起動: 最も簡単で効果的な最初のステップは、使用していないアプリケーションを閉じ、PCを再起動することです。これにより、一時ファイルがクリアされ、長時間実行されていたプロセスの問題が解決することがあります。
- Windows 11のアップデート: OS自体に問題がある場合、最新のWindows Updateを適用することで解決する可能性があります。
- マルウェアスキャン: ウイルス対策ソフトや専用のマルウェア除去ツールでシステム全体をスキャンし、不正なプログラムを駆除します。
- ウイルス対策ソフトの設定確認・変更: ウイルス対策ソフトが過剰にCPUを使用している場合は、設定を見直すか、別のプログラムへの切り替えを検討します。Windows 11には標準でWindows Defenderが搭載されています。
- 特定のバックグラウンドアプリの無効化: Windows 11では全てのバックグラウンドアプリを一括で無効化できませんが、個別に不要なアプリのバックグラウンド動作を制限できます。
- SysMainの一時的な無効化: 問題の切り分けのために、SysMainサービスを一時的に無効にしてCPU使用率の変化を確認します。
- ディスクエラーのチェックとシステムファイルの修復:
CHKDSK
コマンドでディスクエラーをチェックし、SFC /scannow
やDISM
コマンドでシステムファイルを修復します。 - CPU温度の監視と清掃: CPU温度が異常に高い場合は、PC内部のホコリを清掃し、冷却ファンの動作を確認します。
これらの対処法は、簡単なものから順に試していくのが一般的です。 Windows Update、SysMain、Windows Search、DefenderといったWindowsの標準サービスが原因であることも少なくないため、OS自体の動作も調査対象となります。
Windows 11を快適に使うためのCPU設定とメンテナンス
強力なCPUを搭載しているだけでは、Windows 11の最適なパフォーマンスを維持できません。 CPU性能はシステム全体の健全性や設定と密接に関連しており、定期的なシステムのメンテナンスが不可欠です。
- Windows、ドライバ、BIOSの最新化: OS本体(Windows Update経由)、マザーボードのチップセットドライバ、グラフィックカードのドライバ、そして可能であればBIOS/UEFIファームウェアを常に最新の状態に保ちます。これにより、互換性が確保され、システムの安定性と効率が向上します。
- スタートアッププログラムの管理: PC起動時に自動的に実行される不要なプログラムをタスクマネージャーから無効にします。これにより、起動時間の短縮とバックグラウンドでのCPU負荷軽減につながります。
- ストレージセンスとディスククリーンアップの活用: Windows 11に搭載されているストレージセンス機能を有効にし、定期的にディスククリーンアップを実行することで、一時ファイルやキャッシュデータを自動的に削除し、ディスク空き容量を最適化します。これにより、ディスクI/Oの負担が軽減され、システムの応答性が向上します。
- HDDのデフラグ(SSDは不要): もしシステムにHDD(ハードディスクドライブ)が搭載されている場合、定期的なデフラグメンテーションが有効です。断片化したファイルを整理することで、データの読み書き速度が改善されます。SSD(ソリッドステートドライブ)の場合は、TRIM機能により最適化されるためデフラグは不要です。
- 不要なアプリのアンインストール: 使用していないアプリケーションをアンインストールすることで、ディスク容量を解放し、バックグラウンドでのリソース消費を削減します。
- 電源プランの確認: 通常は「バランス」プランで問題ありませんが、CPU性能が抑制されているように感じる場合は、「高パフォーマンス」プランに設定されていないか確認します(ただし、ノートPCではバッテリー消費が増加する可能性があります)。
- メモリリークの監視: タスクマネージャーやリソースモニターを使用して、特定のアプリが異常にメモリを消費し続けていないか(メモリリーク)を監視します。メモリ不足はスワップを発生させ、CPUに負荷をかける原因となります。
これらの予防的なメンテナンスを行うことで、システムの不要な負荷を減らし、CPUがその能力を最大限に発揮できる環境を維持することができます。
まとめ
Windows 11は、その強化されたセキュリティ機能やAIを活用した新しい体験の実現のために、CPUに対して特定の要件を課しています。 本記事で解説してきたように、CPUの互換性を確認することは、Windows 11へのスムーズな移行や新しいPC選びにおいて極めて重要です。
日常作業、ゲーミング、クリエイティブワーク、そしてAIを活用した将来の機能など、個々のニーズに基づいて最適なCPUを選択することの重要性も明らかになりました。 一方で、Microsoftが定めるシステム要件を満たさない非対応CPUでWindows 11を運用することは、特にセキュリティアップデートの受信に関して重大なリスクを伴うことを強調しました。
Windows 11への移行や新しいPCの購入を検討されている方は、まずMicrosoft公式の「PC正常性チェックアプリ」を使用し、必要に応じてCPUの公式リストを参照して、ご自身の環境が対応しているかを確認してください。 そして、本記事で紹介した情報を参考に、ご自身の目的と予算に合致した、情報に基づく賢明なCPU選びを行ってください。
適切な知識を持つことで、Windows 11のCPUに関する選択は決して複雑なものではなくなり、安全で最適化されたコンピューティング体験へと繋がるはずです。 この記事が、皆様のWindows 11に関する理解を深め、成功への一助となれば幸いです。
FAQ
Q1: 私のCPUは公式リストに載っていませんが、比較的新しくて高性能です。それでもWindows 11をインストールできますか? A1: 技術的には一部の回避策を用いてインストール可能な場合がありますが、Microsoftは強く推奨していません。システムの不安定化、互換性の問題、そして最も重大な点として、重要なセキュリティアップデートを受け取れないリスクがあります。お使いのPCはサポート対象外となります。詳細は本記事の「非対応CPUでWindows 11を使い続けるリスクとは?」の章をご参照ください。
Q2: NPUとは何ですか?Windows 11に絶対に必要ですか? A2: NPU(Neural Processing Unit)は、AIタスクを専門に処理するプロセッサです。標準的なWindows 11の体験にはNPUは必須ではありません。しかし、新しい「Copilot+ PC」の機能を利用するためには、40TOPS以上の処理能力を持つNPUを搭載したCPUが必要となります。詳細は本記事の「通常版Windows 11とCopilot+ PCのCPU要件の違い」の章をご参照ください。
Q3: Windows 11用には、Intel、AMD、QualcommのどのCPUが良いですか? A3: 3社すべてがWindows 11に対応した優れたCPUを提供しています。最適な選択は、お客様の具体的なニーズと予算によって異なります。IntelとAMDは従来のデスクトップおよびラップトップのパフォーマンスで強力であり、QualcommのSnapdragonシリーズ(特にXシリーズ)はモバイルデバイスの効率性とArm版Copilot+で優れています。詳細な比較については、本記事の「【2025年版】Windows 11に最適なCPUの選び方:目的別おすすめモデル」の章をご参照ください。
Q4: Microsoftはどのくらいの頻度で対応CPUのリストを更新しますか? A4: Microsoftは通常、主要なWindowsの機能リリースのたびに対応CPUリストを更新します。ただし、CPUメーカーによる新製品の発表から公式リストへの掲載までに時間がかかる場合があります。
Q5: PC正常性チェックアプリでCPUが非互換と表示された場合、新しいPCを購入する以外に何かできることはありますか? A5: まず、PCのUEFI/BIOS設定でTPM 2.0とセキュアブートが有効になっているかを確認してください。これが見落とされがちな点です。これらが有効になっていてもCPUモデルが非互換とされる場合、公式サポートを受けるためにはCPU(場合によってはマザーボードも)のアップグレード、または新しいPCの購入が必要になります。サポート対象外の状態でWindows 11を運用することは推奨されません。
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