「AMD Radeon RX 9070 XTX」という、次世代グラフィックボードの噂を耳にして、その性能やリーク情報が気になっている方も多いのではないでしょうか? 特に、前世代のRDNA 3で「XTX」モデルが存在したことから、RDNA 4世代でも最上位モデルとして登場するのでは?と期待が高まりますよね。
この記事では、2025年4月26日現在の最新情報に基づき、「Radeon RX 9070 XTX」に関する情報の真相、そしてAMDの最新GPUアーキテクチャ「RDNA 4」と、その実質的なフラッグシップモデルである「Radeon RX 9070 XT」について、以下の点を詳しく解説していきます。
- Radeon RX 9070 XTXは本当に存在するのか? リーク情報とAMDの戦略を分析
- AMDの新戦略:RDNA 4世代の命名規則と市場ターゲット なぜ8000番台をスキップ? なぜメインストリーム重視?
- Radeon RX 9070 XT / RX 9070 の公式スペックと性能 Navi 48 GPUの実力、RTX 5070 TiやRX 7900 XTXとの比較
- 進化したレイトレーシングとAI機能 第3世代Ray Acceleratorと第2世代AI Accelerator
- AIアップスケーリングの新時代:FSR 4 技術概要、DLSSとの画質・性能比較
- 市場の反応と課題 高い需要と価格問題、供給状況
- 今後の展開:RX 9060 XT / RX 9070 GRE ミッドレンジとエントリーモデルの噂
この記事を読めば、AMDの最新GPUに関する疑問が解消され、RDNA 4世代の全体像と、現行フラッグシップモデルの実力を深く理解できるはずです。最新グラボの動向を把握し、次のPCアップグレードの参考にしてください!
AMDの新戦略:RDNA 4世代とRX 9000シリーズの登場
AMDは、次世代GPUアーキテクチャ「RDNA 4」と、それに基づく新しいグラフィックボードシリーズ「Radeon RX 9000」を発表しました。これには、いくつかの注目すべき戦略的な変更点が含まれています。
なぜ「RX 8000」をスキップ? 新しい命名規則の狙い
まず驚いたのは、従来のRDNA 3世代(RX 7000シリーズ)から、デスクトップ向けGPUとしては「RX 8000」シリーズをスキップし、いきなり「RX 9000」シリーズへと移行したことです。これは、8000番台がRDNA 3.5ベースのモバイル/APU向け(例:Ryzen Z2シリーズ)に割り当てられたためと考えられます。
さらに、モデル番号の形式も変更されました。従来の「xX00」(例:7900)から、「x0X0」(例:9070)という形式になったのです。この変更には、主に2つの狙いがあると見られています。
- NVIDIA製品との比較容易化: RTX 5090やRTX 5070といったNVIDIAの製品ラインナップと型番の形式を合わせることで、消費者が各性能クラスにおけるAMD製品の位置づけを直感的に理解しやすくする。
- ブランド統一: 同時期に発表されたRyzen 9000シリーズCPUとブランド名を合わせることで、AMDプラットフォーム全体としての認知度と一貫性を高める。
この新しい命名規則は、市場で支配的なNVIDIAに合わせることで、特にメインストリーム層のユーザーにとって、製品選びを分かりやすくする意図があると言えるでしょう。
「パフォーマンス・メインストリーム」への注力
RDNA 4世代におけるもう一つの重要な戦略転換は、市場ターゲットの変更です。AMDは、NVIDIAの最上位モデル(RTX 5080/5090など)が競合する「超ハイエンド市場」ではなく、「パフォーマンス・メインストリーム市場」に注力することを明言しています。
これは、絶対的な性能競争の頂点を追い求めるよりも、より販売数量が多く、価格競争力が重要となるボリュームゾーン(特に500ドル~600ドル帯)で市場シェアを獲得することを目指す、現実的なアプローチと言えます。AMD幹部からは、超ハイエンド市場での開発・競争は投資対効果(ROI)が低い可能性があるとの見方も示唆されています。
ただし、これは永続的な撤退ではなく、将来のアーキテクチャ(RDNA 4の次のUDNAなど)でハイエンド市場に再挑戦する可能性も示唆されています。RDNA 4世代においては、より多くのゲーマーに高性能なグラフィック体験を手頃な価格で提供することに重点を置いた戦略と言えるでしょう。
Radeon RX 9070 XTXは存在するのか? 謎を解き明かす
さて、本題の「Radeon RX 9070 XTX」についてです。なぜこのモデル名が注目されるのでしょうか?
AMD GPUの接尾辞「XT」と「XTX」の意味
AMDのGPU名における「XT」や「XTX」といった接尾辞は、伝統的に同じGPUナンバー内での性能階層を示すために使われてきました。一般的には、無印 < Pro < XT < XTX の順に性能が高くなります。
特に**「XTX」は、そのGPUファミリーにおける最上位モデル**を示唆します。例えば、前世代のRDNA 3では、RX 7900 XTの上に、さらに高性能なRX 7900 XTXが存在しました。
このため、RDNA 4世代のフラッグシップとして「RX 9070 XT」が発表された際、多くのユーザーが「その上にはRX 9070 XTXがあるはずだ」と期待するのは自然な流れでした。
RX 9070 XTXの存在を示す証拠は?
結論から言うと、現時点(2025年4月26日)で「Radeon RX 9070 XTX」というモデルの存在を示す信頼できる公式情報やリーク情報は確認されていません。
発表されているRDNA 4世代の最上位モデルは「Radeon RX 9070 XT」です。
この事実は、前述したAMDのRDNA 4における戦略と一致しています。
- パフォーマンス・メインストリームへの注力: AMDは超ハイエンド市場を意図的に避けています。$599のRX 9070 XT の上にさらに高価な「XTX」モデルを設定することは、この戦略に反します。
- 新しい命名規則: 新しい「x0X0」形式では、性能ティアは主に十の位(例:9070)で示されるようになりました。XT/XTXのような接尾辞の重要性は相対的に低下した可能性があります。
初期のリーク情報の中には、RX 9070 XTがRX 7900 XTXに匹敵する性能を持つ可能性を示唆するものもありました。しかし、これはあくまでRX 9070 XTに関するものであり、RX 9070 XTXの存在を示すものではありません。
したがって、「Radeon RX 9070 XTX」に関する情報は、現時点では過去の命名規則に基づいた憶測である可能性が非常に高いと言えます。AMDがRDNA 4世代で戦略を変更した以上、RX 9070 XTXが登場する可能性は極めて低いと考えられます。
RDNA 4世代の旗艦:Radeon RX 9070 XT / RX 9070 詳細スペック

では、RDNA 4世代の実質的なフラッグシップである「Radeon RX 9070 XT」と、その下位モデル「Radeon RX 9070」はどのようなGPUなのでしょうか?
Navi 48 GPU:RDNA 4の中核
両モデルとも、「Navi 48」と呼ばれるGPUチップを搭載しています。このチップは、TSMCの先進的なN4Pプロセス(4nmクラス)で製造されており、約539億個という膨大なトランジスタを集積しています。ダイサイズは約356.5 mm²です。
RX 9070は、RX 9070 XTで使われているフルスペックのNavi 48チップの一部機能(コンピュートユニット数など)を無効化した、いわゆる「カットダウン版」であり、これにより性能と価格の差別化が図られています。
スペック比較表:RX 9070 XT vs. RX 9070
仕様項目 | Radeon RX 9070 XT | Radeon RX 9070 |
アーキテクチャ/GPU | RDNA 4 / Navi 48 | RDNA 4 / Navi 48 |
プロセス技術 | TSMC N4P | TSMC N4P |
トランジスタ数 | 約539億 | 約539億 |
ダイサイズ | 約356.5 mm² | 約356.5 mm² |
コンピュートユニット (CU) | 64基 | 56基 |
GPUシェーダー (ALU) | 4096基 | 3584基 |
レイトレーシングコア | 64基 | 56基 |
AIコア | 128基 | 112基 |
ゲームクロック (MHz) | 2400 | 2100 |
ブーストクロック (MHz) | 最大 2970 (公式: 3000) | 最大 2520 (公式: 2500) |
VRAM容量 | 16 GB GDDR6 | 16 GB GDDR6 |
VRAM速度 | 20 Gbps | 20 Gbps |
メモリバス幅 | 256-bit | 256-bit |
L2/Infinity Cache | 64 MB | 64 MB |
ROPs | 128基 | 128基 |
TMUs | 256基 | 224基 |
FP32演算性能 (Boost) | 48.7 TFLOPS | 36.1 TFLOPS |
FP16演算性能 (Boost) | 389 TFLOPS (Sparse) | 289 TFLOPS (Sparse) |
INT4演算性能 (Boost) | 1557 TOPS (Sparse) | 1156 TOPS (Sparse) |
メモリ帯域幅 | 640 GB/s | 640 GB/s |
Total Board Power (TBP) | 304 W | 220 W |
公式SEP/MSRP (USD) | $599 | $549 |
(出典: AMD公式発表)
注目すべきは、両モデルとも16GBの大容量GDDR6メモリを搭載している点です。これは、近年のVRAM消費量が増加傾向にあるゲームにおいて、特に高解像度設定でのアドバンテージとなり得ます。一方で、XTモデルはCU数、クロック周波数、そして消費電力(TBP)が高く設定されており、より高い性能を発揮します。
アーキテクチャの進化:レイトレーシングとAIアクセラレーション
RDNA 4アーキテクチャは、特にレイトレーシング(RT)性能とAI処理能力において大きな進化を遂げています。
- 第3世代 Ray Accelerator: RDNA 3と比較して、CUあたりのレイトレーシングスループットが2倍以上に向上したとされています。BVH8トラバーサルや指向性バウンディングボックスなどの新技術により、より効率的で高品質なレイトレーシング処理が可能になりました。これにより、従来のAMD製GPUの弱点とされていたRT性能が大幅に改善されています。
- 第2世代 AI Accelerator: AI処理能力も「スーパーチャージ」され、FP16演算性能が2倍になったほか、FP8、INT8、INT4といった新しいデータ型や構造化スパース性(structured sparsity)に対応しました。これにより、RX 9070 XTでは最大1557 TOPS(スパースINT4)という高いAI演算性能を実現しています。この強化されたAIコアは、後述する新しいアップスケーリング技術「FSR 4」の基盤となっています。
これらの進化により、RDNA 4世代のGPUは、よりリアルなグラフィック表現と、AIを活用した新しい機能に対応できるようになりました。
パフォーマンス分析:RX 9070 XTの実力は?

では、Radeon RX 9070 XTの実際のゲーム性能はどの程度なのでしょうか? リーク情報、AMDの公式発表、そして独立系レビューサイトのベンチマーク結果を総合的に見ていきましょう。
ラスタライゼーション性能:RTX 5070 Tiと互角以上?
従来のゲームで主流の描画方式であるラスタライゼーション性能において、RX 9070 XTは非常に強力です。複数のレビューサイト(Gamers Nexus, Hardware Unboxedなど)の結果を総合すると、NVIDIAの競合製品であるRTX 5070 Tiと、1440pおよび4K解像度において互角か、ゲームによってはわずかに上回る性能を示しています。
- 対 RTX 5070 Ti ($749 MSRP): ゲームタイトルによりますが、平均的には同等レベル。RX 9070 XTが$150安いMSRP ($599) であることを考えると、コストパフォーマンスは非常に高いと言えます。
- 対 RTX 5070 ($549 MSRP): レビューでは、RX 9070 XTがRTX 5070を明確に上回る性能を示しています。
- 対 RX 7900 XTX (前世代フラッグシップ): RX 7900 XTXはCU数が多く(96基 vs 64基)、メモリバス幅も広い(384-bit vs 256-bit)ため、特にGPU負荷が低い状況やメモリ帯域幅が重要になる場面では、依然として7900 XTXがリードすることが多いようです。ただし、その差は以前の世代交代ほど大きくはないかもしれません。
- 対 RX 7900 XT / GRE: RX 7900 XTに対しては明確に優位であり、AMDが比較対象としたRX 7900 GREに対しては、4Kで平均42%、1440pで平均38%高速であると主張しています。
結論として、RX 9070 XTは、$599という価格帯において、非常に高いラスタライゼーション性能を提供し、価格が一段上のRTX 5070 Tiに匹敵する実力を持っています。
レイトレーシング性能:大幅な向上、しかし課題も
RDNA 4アーキテクチャの改良により、レイトレーシング性能はRDNA 3世代から飛躍的に向上しました。AMD自身のデータでは、RX 7900 GREに対して4Kで平均53%、1440pで平均49%高速化していると主張しています。レビューでもこの大幅な進歩は確認されており、AMD製GPUでのレイトレーシング体験がより現実的なものになったと言えます。
しかし、NVIDIAとの比較では、依然として差が残る場面もあります。
- 対 RTX 5070 Ti: レビューによれば、RX 9070 XTはRTX 5070 Tiにかなり近づいたものの、特に負荷の高いレイトレーシング設定(例:Cyberpunk 2077のRT Ultra やパス・トレーシング)では、依然としてRTX 5070 Tiに後れを取る傾向があります。ただし、ゲームや設定によっては同等か、わずかに上回るケースも報告されています。平均すると、RTX 5070 Tiが10%~25%程度優位という見方もあります。
- 対 RTX 5070: レイトレーシング性能においても、RX 9070 XTはRTX 5070と同等か、それ以上の性能を発揮することが多いようです。
結論として、RX 9070 XTのレイトレーシング性能は前世代から劇的に向上しましたが、NVIDIAの同クラス製品(特にRTX 5070 Ti)に対しては、依然として若干のビハインドがあります。ただし、その差は確実に縮まっており、多くのゲームで快適なレイトレーシング体験が可能です。
相対性能推定サマリー
レビューサイトのデータやAMDの主張を基に、主要なGPUに対するRX 9070 XTのおおよその相対性能を推定した表を以下に示します。これはあくまで目安であり、ゲームタイトルや解像度、設定によって実際の性能は大きく変動します。
比較対象GPU | 1440p Raster (平均) | 4K Raster (平均) | 1440p RT (平均) | 4K RT (平均) |
RX 9070 XT | 100% | 100% | 100% | 100% |
RX 9070 | ~88-91% | ~87-90% | ~85-88% | ~85-88% |
RX 7900 XTX | ~105-110% | ~103-108% | ~80-90% | ~80-90% |
RX 7900 GRE | ~70-75% | ~68-73% | ~60-65% | ~58-63% |
Nvidia RTX 5070 Ti | ~97-103% | ~95-102% | ~110-125% | ~110-125% |
Nvidia RTX 5070 | ~80-85% | ~78-83% | ~85-95% | ~85-95% |
(出典: 複数のレビューサイト、AMD公式発表に基づく推定値)
AIアップスケーリングの新星:FSR 4
RDNA 4世代の目玉機能の一つが、新しいAIベースのアップスケーリング技術「FSR 4 (FidelityFX Super Resolution 4)」です。
FSR 4とは? 機械学習への移行
FSR 4は、従来のFSR 3.1まで採用されていた空間的・時間的アルゴリズムから脱却し、機械学習(ML)、具体的には畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を基盤とするアップスケーリング技術へと進化しました。この処理には、RDNA 4 GPUに搭載された強化されたAIアクセラレータ(WMMA、FP8サポートなど)が活用されます。
このため、FSR 4は発売時点ではRDNA 4 GPU(RX 9000シリーズ)専用の機能となっています。ソニーとの共同開発(PS5 ProのPSSR技術との関連性)も示唆されています。
FSR 4の主な目標は、FSR 3.1と比較して画質、特に時間的安定性(ちらつきやゴーストの抑制)とディテールの保持能力を大幅に向上させることです。
FSR 4 vs. FSR 3 vs. DLSS:画質とパフォーマンス
Digital Foundryなどの技術レビューによると、FSR 4はFSR 3.1と比較して画質が劇的に向上しており、特にゴーストや不安定さといったFSR 3の大きな弱点が解消されていると評価されています。
NVIDIA DLSSとの比較では、以下のような評価が見られます。
- 対 DLSS CNN (DLSS 2.x/3.x相当): FSR 4は、一般的にDLSSの旧世代CNNモデルよりも優れた画質を提供すると評価されています。
- 対 DLSS Transformer (DLSS 4相当): NVIDIAの最新技術であるDLSS Transformerモデルと比較すると、ディテールの保持やアンチエイリアシングの品質において、依然としてDLSS Transformerに分があるというのが一般的な見解です。ただし、その差は以前よりも縮小しています。
パフォーマンスへの影響については、FSR 4のアップスケーリング処理は、FSR 3.1やDLSS CNNと比較して、同等の品質設定で**わずかにパフォーマンスコストが高い(=FPS向上率が低い)**場合があります。これはDLSS Transformerモデルでも見られる傾向です。
フレーム生成については、FSR 4のアップスケーリングは既存のFSR 3.1のフレーム生成技術と組み合わせることが可能です。FSRのフレーム生成はDLSSより高速な場合があるものの、画質面では劣る可能性があるとの指摘もあります。
結論として、FSR 4は画質面で大きな進歩を遂げ、DLSSの旧世代モデルを上回る品質を実現しました。最新のDLSS Transformerにはまだ及ばないものの、RDNA 4ユーザーにとっては非常に高品質なアップスケーリングの選択肢となります。
FSR 4の制限と将来性
現時点での最大の制限は、RDNA 4 GPU専用であることです。これにより、全てのRTXシリーズで利用可能なDLSSと比較して、利用できるユーザー層が限定されます。
また、ゲーム側の対応も重要です。発売時には30タイトル以上でサポートされ、将来的には75タイトル以上を目指すとしていますが、普及にはゲーム開発者による積極的な採用が必要です。ただし、FSR 3.1対応ゲームの一部では、ドライバレベルでのオーバーライドによってFSR 4を有効化できる可能性も示唆されています。
市場の現実:価格、入手性、そして反応

鳴り物入りで登場したRadeon RX 9070 XT / RX 9070ですが、市場での現実は厳しいものでした。
MSRP vs. 実売価格:高騰と供給不足
AMDはRX 9070 XTを$599、RX 9070を$549という意欲的な希望小売価格(MSRP)で発表しました。しかし、2025年3月6日の発売直後から、世界中の多くの地域で深刻な供給不足と、MSRPを大幅に上回る実売価格が報告されました。
- $599のRX 9070 XTが、$700~$1000以上で販売される例が多数報告。
- ドイツなど一部地域では、発売から時間が経つにつれて価格がMSRPに近づく動きも見られましたが、依然として高値安定の地域も多いようです。
- 発売直前の価格変更や、パートナーへのリベート提供の噂もあり、当初のMSRP設定自体が市場の実態と乖離していた可能性も指摘されています。
この価格高騰により、AMDが意図した「高いコストパフォーマンス」という最大の魅力が、発売当初は大きく損なわれる結果となりました。
高い需要と好調な販売レポート
価格問題にもかかわらず、Radeon RX 9070シリーズ、特にXTモデルへの市場の需要は非常に強かったようです。
- AMDのCEOリサ・スー氏は、RX 9070 XTの発売初週の売上が過去世代の10倍であり、AMD GPU史上最高のローンチであったと主張しています(ただし具体的な販売数「20万台」は噂レベルと訂正)。
- ユーザーレポートでも、高値にもかかわらず即座に売り切れる状況が確認されています。
- 日本市場ではRX 9070シリーズが約50%のシェアを獲得したとの報告もあります。
- 対照的に、競合のNVIDIA RTX 5070/Tiの在庫が店頭に残っているケースも報告されています。
この強い需要の背景には、RX 9070 XTが(少なくともMSRP基準では)魅力的な価格で非常に高いラスタライゼーション性能を提供し、NVIDIA製品の価格設定や性能向上幅に対する一部のユーザーの不満があったことが考えられます。
パートナーの動向:MSIのRadeon RX 9000シリーズ製造見送り
市場での成功とは裏腹に、大手AIBパートナーであるMSIが、Radeon RX 9000シリーズ全体の製造を見送るという衝撃的な決定を下しました。
MSIは過去のRadeonシリーズ(RX 5000~7000)ではパートナーでしたが、RDNA 4世代ではAMD製カードを製造しません。この理由としては、以下のような要因が推測されています。
- NVIDIAとの強固なパートナーシップ: MSIにとってNVIDIAとのビジネスの方が収益性が高い。NVIDIAの圧倒的な市場シェア(Steam調査で約83%)は魅力的です。
- AMDカードの利益率の低さ: AMD製カードの利益率が低い可能性。
- MSRP決定の遅延: AMDによるMSRPの最終決定が遅れ、パートナーの計画に影響を与えた可能性。
- EVGAの撤退: EVGAがGPU市場から撤退したことで、MSIがNVIDIAとの関係をさらに強化する機会を得た可能性。
AMDはAsus、XFX、PowerColor、Sapphireといった他のパートナーとの関係を優先しているとも報じられています。MSIの撤退は、Acerのような他のパートナーにとってはチャンスとなりますが、製品が市場で成功していても、ビジネス上の判断が優先される現実を示しています。
今後の展開:RX 9070 GRE と RX 9060 XT
Radeon RX 9070 XT / RX 9070に続き、AMDはさらにラインナップを拡充する計画があるようです。
Radeon RX 9070 GRE:性能と価格の隙間を埋める?
RX 9070と、後述するRX 9060 XTの間の価格・性能帯を埋めるモデルとして、「Radeon RX 9070 GRE (Great Radeon Edition)」の存在がリークされています。
- スペック (噂):
- GPU: Navi 48 XL (Navi 48のカットダウン版)
- ストリームプロセッサ: 3072基 (48 CU)
- メモリ: 12GB GDDR6
- メモリバス: 192-bit
- メモリ速度: 18 Gbps
- ブーストクロック: 2.79 GHz (カスタムモデルは最大3.0 GHz?)
- ターゲット価格帯: $400 – $500 程度?
- たとえば、 NVIDIA RTX 5060 Ti でしょうか?
- 発売時期: 当初は2025年Q2 (5月頃) と噂されていましたが、Q4 (10月~11月頃) に延期された可能性が指摘されています。
- 発売地域: 過去のGREモデル同様、当初は中国市場限定となる可能性が高いと見られています。
RX 9070 GREは、Navi 48チップの歩留まり向上や、特定市場向けの戦略的な製品として位置づけられている可能性があります。
Radeon RX 9060 XT (8GB/16GB):最重要ミッドレンジ市場へ
AMDが最も注力すると見られるミッドレンジ市場向けに、「Radeon RX 9060 XT」の登場が期待されています。AMD自身の発表スライドでも存在が示唆されていました。
- スペック (噂):
- GPU: Navi 44 (Navi 48とは異なる新しいチップ)
- ストリームプロセッサ: 2048基 (32 CU?)
- ブーストクロック: 3.2 GHz超?
- メモリ: 8GB と 16GB のGDDR6モデルが存在
- メモリバス: 128-bit
- メモリ速度: 20 Gbps?
- PCIeインターフェース: PCIe 5.0 x8
- ターゲット価格帯: $300 – $400 程度?
- 例: NVIDIA RTX 5060/5060 Ti
- 発売時期: 2025年5月18日に発表または発売される可能性が高いと見られています。これはNVIDIA RTX 5060シリーズの発売時期と重なる可能性があります。
RX 9060 XTが8GBと16GBの2モデル展開となるのは興味深い点です。8GBモデルは価格を抑えることができますが、近年のVRAM容量不足への懸念から批判を受ける可能性もあります。16GBモデルはより将来性がありますが、価格は高くなるでしょう。この価格設定と性能バランスが、ミッドレンジ市場での成功の鍵を握ります。
まとめ:Radeon RX 9070 XTXの真相とRDNA 4の展望

今回の調査結果をまとめます。
- Radeon RX 9070 XTXは存在しない可能性が高い: 現時点での情報に基づくと、RX 9070 XTXはAMDのRDNA 4世代のラインナップには含まれておらず、過去の命名規則からの憶測であると考えられます。
- RDNA 4のフラッグシップはRX 9070 XT: RX 9070 XTは、$599という価格でNVIDIA RTX 5070 Tiに匹敵する強力なラスタライゼーション性能と、大幅に改善されたレイトレーシング性能を提供します。
- AMDの戦略転換: RDNA 4世代では、超ハイエンド市場ではなく、販売量の多いパフォーマンス・メインストリーム市場に注力する戦略を採用しました。命名規則もNVIDIAに近づけ、分かりやすさを重視しています。
- FSR 4の登場: 新しいAIベースのアップスケーリング技術FSR 4は、画質面で大きな進歩を遂げ、DLSSとの競争力を高めました。ただし、RDNA 4専用という制限があります。
- 市場の課題: 高い需要にもかかわらず、発売当初の深刻な供給不足と価格高騰が大きな課題となりました。今後、価格がMSRPに近づくかどうかが注目されます。
- 今後の展開: ミッドレンジ向けのRX 9060 XT (8GB/16GB) や、RX 9070 GREといったモデルの登場が噂されており、これらがAMDの市場シェア拡大の鍵を握る可能性があります。
Radeon RX 9070 XTは、製品自体の性能と(MSRP基準での)価格設定は非常に魅力的です。もし今後、供給が安定し、価格がMSRP近くまで落ち着けば、多くのゲーマーにとって非常に価値のある選択肢となるでしょう。
AMDのRDNA 4世代は、パフォーマンス・メインストリーム市場でNVIDIAに挑戦するための意欲的な一歩です。今後のRX 9060 XTなどの登場と、市場価格の動向を引き続き注視していきましょう。
免責事項: この記事は、公開されているリーク情報、公式発表、レビュー記事に基づいて作成されています。リークや噂に基づく情報は、公式な確認や広範なテストによって検証されるまで、未確認情報として扱われるべきです。特に性能に関する数値は、テスト環境やゲームタイトルによって大きく変動する可能性があります。
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