コンピュータの性能において、ランダムアクセスメモリ(RAM)は、頻繁に使用されるデータを一時的に高速に保存する場所として、非常に重要な役割を果たしています。RAMの性能は、システムの応答性、マルチタスク処理能力、そして高負荷なアプリケーションやゲームの動作に直接影響を与えます。
長らくの間、DDR4規格がパソコンのRAMの主流でしたが、近年ではより新しいDDR5規格が登場し、注目を集めています。DDR4はその成熟した技術とコストパフォーマンスの高さから依然として広く採用されていますが、DDR5はその速度、帯域幅、効率性において大きな進歩を遂げており、最新のシステムでその採用が進んでいます。
この記事では、「ddr4 ddr5 どっち」という疑問を持つ読者の皆様に向けて、DDR4とDDR5の違いを徹底的に比較解説します。互換性、今購入するべきかどうか、動画編集やゲームといった特定の用途での性能差など、皆様が抱える疑問を解消し、ご自身のニーズに最適なRAM規格を選択できるよう、詳細な情報を提供します。現代のアプリケーションやゲームは、より多くのメモリ容量とより高速なデータ転送速度を要求する傾向にあり、RAMの選択はこれまで以上に重要になっています。
DDR4 vs DDR5:主要な技術仕様

DDR4とDDR5は、どちらもパソコンのメインメモリとして機能しますが、その技術的な仕様にはいくつかの重要な違いがあります。これらの違いを理解することで、どちらの規格がご自身の用途に適しているかを判断する手助けとなるでしょう。
- クロック速度とデータ転送速度: DDR4の速度は一般的に1600 MT/sから3200 MT/sの範囲で、オーバークロックされたモジュールでは3600 MT/s、4000 MT/s、さらには5000 MT/sを超えるものも存在します 。一方、DDR5はより高いベースラインを持ち、4800 MT/sから始まり、6400 MT/s、さらには8400 MT/s以上の速度を実現するハイエンドキットも登場しています 。DDR5は、DDR4と比較して、データ転送速度においてより高いベースラインと潜在能力を提供します。これにより、帯域幅を大量に消費するタスクにおいて、より優れたパフォーマンスが期待できます。
- 帯域幅: DDR5はDDR4と比較して、大幅に高い帯域幅を提供します 。例えば、DDR5の帯域幅は最大51.2 GB/sに達することができ、これはDDR4の最大25.6 GB/sの2倍です 。一部の情報源では、DDR5は初期段階でピンあたり6.4 Gbpsの帯域幅を持ち、将来のバージョンではDDR4の2倍となる6.4 Gbpsに達するとも示唆されています 。DDR5の2倍の帯域幅は、高速なデータ処理を必要とするアプリケーションにとって大きな利点となり、データアクセスにおける遅延を減らし、目覚ましいパフォーマンスの向上につながる可能性があります。
- 電圧と消費電力: DDR5はDDR4の1.2Vと比較して、より低い1.1Vの電圧で動作します 。これにより、DDR5は消費電力が低く、エネルギー効率が向上します。一部の情報源では、全体的な消費電力が最大20%削減される可能性も示唆されています 。DDR5の低電圧動作は、エネルギーコストの削減と発熱量の抑制に貢献し、デスクトップシステム(冷却の必要性を減らす)とポータブルシステム(バッテリー寿命を延ばす)の両方にとって有益です。
- 容量: DDR5はDDR4の最大64GBと比較して、はるかに高いモジュール容量をサポートし、潜在的には1モジュールあたり128GBに達する可能性があります 。128GBのDDR5モジュールはまだ主流ではありませんが、その潜在的な容量は大幅に高くなっています。DDR5の大容量化により、より多くのRAMを搭載したシステムを構築することが可能になり、プロフェッショナルな動画編集、3Dレンダリング、大規模なシミュレーションといったメモリを大量に消費するタスクや、増え続けるソフトウェアの要求に対する将来的な備えとして非常に重要です。
- レイテンシ: DDR5は一般的にDDR4よりも高いCASレイテンシ(CL)値を持っています 。例えば、DDR4は一般的にCL16ですが、DDR5はCL32以上で始まります。しかし、DDR5のより高速なクロック速度のおかげで、ナノ秒単位での実際のレイテンシはわずかに高いか、場合によっては同等になる可能性があります 。真のレイテンシの計算式は、(2000 / RAM速度)x CASレイテンシです。計算によると、DDR5-4800 CL40(16.67 ns)の真のレイテンシは、DDR4-3200 CL16(10 ns)またはCL22(13.75 ns)よりもわずかに高いだけです 。DDR5のCL値は高いですが、DDR4と比較して実際のレイテンシの差は、多くのアプリケーションにとってそれほど重要ではない可能性があり、特に新しいより高速なDDR5キットではその傾向があります。帯域幅の増加は、わずかに高いレイテンシをしばしば補い、全体的なパフォーマンスの向上につながります。
- その他の技術的な違い: DDR5は、チップレベルでのデータ整合性と信頼性を向上させるオンダイECC(Error Correcting Code)を備えています 。DDR5モジュールは、DDR4のシングル64ビットチャネルとは対照的に、DIMMあたり2つの独立した32ビットチャネル(デュアルチャネルDIMM)を備えており、メモリへのアクセス効率が向上し、帯域幅の使用率が向上する可能性があります 。DDR5は、より効率的な電力管理のために、電圧調整をマザーボードからメモリ自体に移すオンモジュールPower Management Integrated Circuit(PMIC)を組み込んでいます 。DDR5はDDR4(BL8)と比較してバースト長(BL16)が長く、シングルバーストでより多くのデータを転送できるため、読み取り/書き込み効率が向上し、CPUキャッシュラインサイズとの整合性が向上します 。これらのアーキテクチャと機能レベルの改善により、DDR5はDDR4と比較してパフォーマンス、信頼性、および電力管理が強化され、現代のコンピューティングの要求に合わせて設計された、より高度なメモリテクノロジーとなっています。
互換性

DDR4とDDR5は、互換性がありません。これは、アップグレードを検討しているユーザーにとって非常に重要な点です。両者には物理的な形状、ピン構成(DDR4:288ピン、DDR5:288ピンだがピン配列が異なる)、およびモジュールの切り欠きの位置が異なり、誤った種類のスロットに挿入することを防ぐようになっています。
DDR5を使用するには、DDR5メモリスロットと互換性のあるチップセットを備えた、DDR5をサポートするように特別に設計されたマザーボードが必要です 。Intelの第12世代、第13世代、および第14世代のCPUはDDR4とDDR5の両方をサポートしており、マザーボードメーカーはどちらの規格を実装するかを選択できます 。ただし、特定のマザーボードがサポートするのはいずれか一方の規格のみです。
一方、AMDのRyzen 7000および8000シリーズのCPUはDDR5のみを排他的にサポートしているため、これらのプロセッサにはDDR5マザーボードが必須となります 。Ryzen 5000シリーズなど、以前のRyzen CPUはDDR4を使用しています 。DDR4とDDR5は根本的に互換性がないため、選択したRAMの種類とマザーボードおよびCPUが互換性があることを確認する必要があります。DDR5にアップグレードするには、多くの場合、新しいマザーボードと、場合によっては新しいCPUが必要になるため、アップグレードの総コストに大きな影響を与える可能性があります。
今買うなら?
- 価格動向と入手可能性: DDR4の価格は下落傾向にあり、一般的にDDR5よりも安価であるため、予算重視の構成にとって魅力的な選択肢となっています。一方、DDR5の価格も初期の高値からは大幅に下がりましたが、特に高速・大容量のキットでは、依然として同等のDDR4キットよりも高価になる傾向があります。ただし、価格差は縮小傾向にあります 。一部のアナリストは、DDR5のコスト効率が2025年の第1四半期までに20nmプロセスのDDR4を上回ると予測しています 。主要メーカーがDDR5やより新しいテクノロジーに注力するにつれて、将来的にはDDR4の供給が減少する可能性があり、残りの在庫の価格が上昇する可能性があります 。DDR4は現在、様々な小売業者で広く入手可能です 。DDR5の入手可能性も発売当初から大幅に改善され、より幅広い速度と容量の製品が容易に入手できるようになっています 。
- 推奨事項: 予算が最優先事項であり、DDR4のみをサポートする古いシステムを構築またはアップグレードする場合は、一般的な使用やほとんどのゲームシナリオにおいて、依然として非常に実行可能で費用対効果の高いオプションです 。特にIntel(第12世代以降)またはAMD(Ryzen 7000シリーズ以降)の最新CPUと組み合わせる新しいシステムを構築する場合は、将来性と要求の厳しいアプリケーションやゲームでのより高いパフォーマンスの可能性のために、DDR5が一般的に推奨されます 。近い将来にプラットフォーム全体(CPUとマザーボード)のアップグレードを予定している場合は、今DDR5に投資することで、新しいテクノロジーと足並みをそろえ、メモリ投資の寿命を延ばすことができます 。
特徴 | DDR4 | DDR5 |
---|---|---|
メリット | 初期コストが低い、広く入手可能、旧システムとの互換性 | より高いパフォーマンスの可能性、将来性がある、最新CPUとの互換性 |
デメリット | 将来のアップグレードパスが限られる、DDR5と比較してパフォーマンスが低い | 初期コストが高い、互換性のあるマザーボードが必要 |
動画編集での性能
DDR5は、帯域幅が大幅に増加しているため、動画編集ワークフローにおいて一般的に高いパフォーマンスを提供し、大容量の動画ファイルの処理が高速になり、再生がスムーズになりますが、使用する動画編集ソフトウェアによってその影響は異なる場合があります 。より高速なRAM速度とより高い帯域幅は、レンダリング時間の短縮、ワークフロー効率の向上、高解像度映像(4K、8K)や複数のレイヤーとエフェクトを含む複雑なプロジェクトのスムーズな処理を可能にします 。
一部の独立したテストでは、特に動画のトランスコーディングやエクスポートといった特定の動画編集タスクにおいて、DDR5で目覚ましいパフォーマンスの向上が見られました 。RAM容量は、スムーズで効率的な動画編集にとって絶対に不可欠であり、プロの作業では32GBが最低推奨容量と見なされ、要求の厳しいプロジェクトや編集ソフトウェアと他のアプリケーション間のマルチタスク処理には64GB以上が非常に有益です 。
DDR5メモリとWindows 11オペレーティングシステムの組み合わせは、DDR4と古いオペレーティングシステムと比較して、動画編集タスクにおいて最高の全体的なパフォーマンスを提供する可能性があります 。一部の情報源では、コンテンツ作成におけるハイエンドDDR4とDDR5のパフォーマンスの違いは、特定のシナリオでは約10%の向上である可能性が示唆されていますが 、他のテストでは、特にメモリを大量に消費する操作において、より大きなパフォーマンスの向上が示されています。
プロフェッショナルおよび真剣なアマチュアの動画編集者にとって、高解像度映像とAdobe Premiere ProやAfter Effectsなどの要求の厳しいソフトウェアを使用する場合、DDR5の帯域幅の増加は、大幅な時間節約、応答性の向上、および大幅な速度低下なしにより複雑なプロジェクトを処理できる能力につながる可能性があります。特に要求の少ないプロジェクトの場合、十分な容量を備えた高速DDR4は依然として使用できますが、DDR5はパフォーマンスと進化する動画編集ニーズに対する将来のスケーラビリティの点で明確な利点を提供します。
ゲームでの性能

DDR5は、一部の最新ゲームタイトル、特にCPUに負荷がかかるシナリオやメモリ帯域幅に大きく依存するゲームにおいて、より高いフレームレートとよりスムーズなゲームプレイを提供できます。これは特に1080pや1440pといった低い解像度で顕著です。実際のパフォーマンスの向上は、特定のゲーム、ゲームの設定、およびCPUとGPUを含むシステム全体の構成によって大きく異なります 。特に最新のハードウェア向けに最適化された新しいタイトルでは、古いゲームや要求の少ないゲームよりもDDR5でより大きなパフォーマンスの向上が見られる場合があります 。
4Kなどの高い解像度では、グラフィックカードが主要なパフォーマンスのボトルネックになることが多いため、DDR4とDDR5のパフォーマンスの違いは、システムがメモリ制限ではなくGPU制限になるため、それほど顕著ではないか、場合によっては無視できる程度になることがあります 。2024年のスムーズで将来性のあるゲーム体験には、32GBのRAMがますます推奨される標準となっており、より優れたマルチタスク処理と要求の厳しいゲームへの対応が可能になります 。16GBでも多くのゲーム、特に低い設定ではまだ十分かもしれませんが、32GBの方がより余裕があります。
一部の情報源では、特にレイテンシが帯域幅よりも重要なゲームにおいて、高度に調整された低レイテンシDDR4は、エントリーレベルまたはXMP対応のDDR5と比較して、依然として競争力のあるゲームパフォーマンスを提供できることが示唆されています 。ただし、最適化されたタイミングを備えた高速DDR5は、ほとんどの現代のゲームシナリオで一般的にDDR4を上回ります 。最高のフレームレートと最もスムーズな体験を目指すゲーマーにとって、特に最新の要求の厳しいタイトルでは、DDR5はその高い帯域幅とより高速な速度の可能性により、パフォーマンスの利点を提供します。高品質のDDR4は、特に予算を重視するゲーマーや古いプラットフォームを使用しているゲーマーにとって、依然として非常に優れたゲーム体験を提供できますが、DDR5への投資は、新しいゲームがより高速なメモリの恩恵を受ける傾向と一致しています。パフォーマンスの向上は、CPUとメモリがより重要な役割を果たす低い解像度でより顕著になる傾向があります。
将来の見通し
主要なDRAMメーカーであるSamsung、SK Hynix、Micronは、市場がDDR5およびより新しいテクノロジーに移行するにつれて、2025年後半までに旧式のDDR3およびDDR4メモリ規格の生産を停止する可能性があるという報告があります 。この生産終了の可能性は、DDR4メモリの供給不足を引き起こし、その結果、残りの在庫の価格が上昇する可能性があり、DDR5がより安定した長期的な投資となるでしょう 。DDR5は、新しいコンピューティングプラットフォームでの採用が増加し、より幅広い製品が入手可能になるにつれて、今後数年間で主要なメモリ規格になると広く予想されています 。
DDR5テクノロジーの開発は進行中であり、メーカーはより高速なメモリキットを継続的にリリースしており、速度は近い将来に8400 MT/s以上に達する可能性があります 。さらに先を見据えると、次世代RAMであるDDR6はすでに開発中であり、DDR5よりも大幅なパフォーマンスの飛躍を提供することが期待されており、潜在的なリリース時期は2025年後半または2026年頃です 。
DDR4 RAMの一般的な寿命は非常に長く、通常の使用条件下で5〜10年、またはそれ以上です 。DDR5は、より高度なアーキテクチャと機能により、同等またはそれ以上の寿命を持つと予想されます 。メモリ市場の将来は、新しいシステムの主要な規格としてのDDR5を明確に示しており、DDR4は供給制約と最終的な陳腐化に直面する可能性があります。DDR6は将来さらに高いパフォーマンスを約束しますが、DDR5は今後数年間、高性能メモリの主要な規格であり続け、新しいPCを構築したり、最新のプラットフォームにアップグレードしたりするユーザーにDDR4よりも大きなメリットを提供します。
結論
DDR4とDDR5はどちらも重要な役割を果たしますが、DDR5はより高速な速度、より高い帯域幅、より優れた効率性を提供し、最新のコンピューティングの要求に対応するように設計されています。DDR4は依然として費用対効果が高く、既存のシステムや予算重視のユーザーにとって適していますが、DDR5は高性能コンピューティングの未来を代表しています。
最終的な決定は、個々のニーズ、予算、およびシステムの互換性に依存します。最新のテクノロジーを活用し、将来に備えたシステムを構築したい場合は、DDR5が最適な選択肢です。予算が限られている場合や、DDR4のみをサポートするシステムを使用している場合は、DDR4は依然として十分なパフォーマンスを提供します。動画編集者や熱心なゲーマーなど、要求の厳しいタスクを実行するユーザーは、DDR5のパフォーマンス上の利点を最も実感できるでしょう。
メモリテクノロジーは進化し続けており、DDR6の登場が視野に入っていますが、現時点では、DDR5は高性能コンピューティングの最前線に立っています。ご自身のニーズと将来の計画を慎重に検討し、最適なRAM規格を選択してください。
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