GeForce RTX 5000シリーズは、NVIDIAの最新世代GPUとして高い期待を集めていますが、発売以降、いくつかの問題点が報告されています。本稿では、RTX 5000シリーズに影響を与える可能性のある問題点について、入手可能な情報を詳細にまとめ、ユーザーが十分な情報に基づいた判断を下せるよう、包括的な分析を提供します。
1. ROP不足

RTX 5000シリーズの一部モデルでは、ラスタ演算パイプライン(ROP)の数が不足しているという問題が報告されています 。ROPは、レンダリングプロセスにおいて重要な役割を果たすハードウェアであり、その不足はフレームレートに悪影響を及ぼす可能性があります。
NVIDIAは、RTX 5090、RTX 5070 Ti、および中国限定のRTX 5090Dにおいて、このROP不足を製造上のエラーとして公式に認めています 。Redditでの報告によると、GeForce RTX 5080 Founders Editionでも、本来112個であるべきROPが104個しかないケースが見つかっています 。
ROPの不足は、最大で約7%のパフォーマンス低下を引き起こす可能性があると推定されています 。影響を受ける可能性のあるユーザーは、GPU-Zなどのツールを使用して、自身のグラフィックカードのROP数をチェックすることを推奨します 。
モデル | 期待されるROP数 |
---|---|
RTX 5090 | 176 |
RTX 5080 | 112 |
RTX 5070 Ti | 88 |
RTX 5070 | 64 |
残念ながら、ドライバーやBIOSのアップデートなどのソフトウェアによる解決策は存在せず、影響を受けるモデルでは、不足しているROPを修正することはできません 。NVIDIAは、この問題が発生したユーザーに対して、グラフィックカードの製造元に交換を依頼することを推奨しています 。しかし、現在、RTX 50シリーズの供給不足が続いているため 、交換には時間がかかる可能性があります。
2. 供給不足
RTX 5000シリーズは、発売当初から深刻な供給不足に悩まされています 。特にRTX 5070 Tiは、発売日に米国の主要小売店で在庫が10個未満だったという報告もあり 、RTX 5080よりも深刻な状況である可能性が示唆されています。英国のある小売店では、RTX 5070 Tiの再入荷に最大6週間かかる可能性があると顧客に通知しています 。また、RTX 5070と未発表のRTX 5060も、同様の供給不足に陥る可能性があるという憶測もあります 。
この供給不足は、転売や価格高騰を引き起こし 、正規の価格で購入することが困難な状況を生み出しています。一部のユーザーは、Micro Centerなどの小売店で発売日に購入するために、数日前からキャンプアウトを行うなど 、入手困難な状況が続いています。
NVIDIAは、正規購入者を支援するために、「優先アクセス」スキームを導入しました 。このスキームは、転売ヤーを排除し、真のゲーマーがカードを入手できるようにすることを目的としています。しかし、供給不足の根本的な原因である、限られた製造能力 に対処しない限り、この問題は解決しない可能性があります。
3. クラッシュとブラックアウト

RTX 5000シリーズ、特にRTX 5090とRTX 5080では、クラッシュやブラックアウトの問題が報告されています 。これらの問題は、例えば「Apex Legends」や「Call of Duty」などのゲームのプレイ中や 、マルチモニター環境で発生するなど、様々な状況で報告されています。
一部のユーザーは、最新のドライバー(バージョン572.16)をインストールした後にクラッシュが発生したと報告しており 、ドライバーが原因である可能性が示唆されています。また、RTX 4000シリーズでも同様の問題が発生しているという報告もあり 、古いドライバーファイルとの競合が原因である可能性も考えられています。
NVIDIAは、これらの問題を認識しており、現在調査中であると発表しています 。しかし、根本的な原因や解決策はまだ明らかになっていません。
4. 12VHPWRコネクタの問題
RTX 5000シリーズのGPUを搭載したグラフィックカードでは、12VHPWR電源コネクタの溶融が報告されています 。この問題は、ケーブルやコネクタ自体の製造上の欠陥と、NvidiaがRTX 4000および5000 GPUから電力検知とバランス調整機能を削除したことが原因である可能性があります 。
不適切な接続が発生した場合、GPUはコネクタごとの9.5Aの仕様を超えてしまい、コネクタの溶融やGPUの故障につながる可能性があります 。また、RTX 5090では、消費電力の過渡的なスパイクがケーブルの600W制限とPCIeスロットからの75Wを超える可能性があり、コネクタにさらに負担をかける可能性があります 。
5. Nvidia App が GeForce Experience に取って代わる
NVIDIAは、GeForce Experienceのサポートを終了し、Nvidia Appに置き換えました 。この新しいプラットフォームは、GeForce Experienceとコントロールパネルを統合することを目的としており、ユーザーがNVIDIAのソフトウェアエコシステムと対話する方法が変わります。一部のユーザーは使い慣れたツールの喪失を嘆くかもしれませんが、古いアプリの制限に不満を感じていたユーザーは、この変更を歓迎するでしょう。
6. VRAM容量の不足
RTX 5000シリーズでは、RTX 5090を除き、VRAM容量が前世代から据え置きとなっています 。最近のゲームでは、高解像度テクスチャや複雑なエフェクトを使用するため、VRAMの需要が高まっており、この容量不足は、将来的にパフォーマンスのボトルネックとなる可能性があります 。
例えば、「Indiana Jones」の最新ゲームでは、12GB未満のVRAMを搭載したGPUでは、1080pの最高設定でもパフォーマンスが低下することが報告されています 。これは、かつてハイエンドカードであったRTX 3080でさえ、VRAM不足に悩まされる可能性があることを示唆しています。
AMDが、より多くのVRAMを搭載したGPUを一貫して提供していることを考えると 、NVIDIAがVRAM容量を増やすことに消極的な姿勢を見せていることは、将来的な製品の陳腐化を懸念させる点です。特に、RTX 5070 TiやRTX 5070のような高価なGPUでさえ、VRAM容量が不足していることは、ユーザーにとって大きなデメリットと言えるでしょう 。
7. 価格の高騰
RTX 5000シリーズは、前世代と比較して価格が上昇しています 。特にRTX 5090は、299,595円と、RTX 4090の発売価格である239,659円から25%も値上がりしています 。RTX 5080も、前世代と比較して価格が上昇しており、コストパフォーマンスの面で疑問視されています 。
この価格上昇は、一部のユーザーから批判の声が上がっており 、コストパフォーマンスの低下を懸念する声も少なくありません。さらに、NVIDIAは、古い世代のカードの生産を早期に停止し、新世代の発売前に古いカードの価格を上昇させることで、人為的に需要を増加させ、価格高騰を招いているという指摘もあります 。また、ボードパートナーがMSRPよりも30〜50%高い価格でカードを直接販売することを許可していることも、価格高騰に拍車をかけています 。
8. Enshittification の懸念
Redditのスレッドでは、企業がユーザーエクスペリエンスよりも利益を優先する「enshittification」現象について議論されています 。NVIDIAは、限られたウェハ供給のために、ゲーミングGPUよりもAIカードを優先している可能性があり 、これが供給不足と価格高騰の一因となっている可能性があります。
過去のNVIDIAの価格戦略を振り返ると、同社は、消費者を犠牲にして利益を追求してきた歴史があります 。今回のRTX 5000シリーズの価格設定や供給不足も、この「enshittification」の一環であると捉えるユーザーもいるようです。
9. DLSS 4 and Multi-Frame Generation
RTX 5000シリーズでは、新しいTransformerベースのAIアップスケーリング技術と改良されたフレーム生成技術により、RTX 4090と比較して画質が向上していることが報告されています 。
DLSS 4では、Multi-Frame Generationと呼ばれる技術が導入され、レンダリングされたフレームごとに3つの追加フレームを生成することで、フレームレートを大幅に向上させることができます 。しかし、フレーム生成は、ぼやけやアーティファクトなどの問題を引き起こす可能性もあります 。
「Plague Tale Requiem」では、RTX 50シリーズのカードは、Multi Frame Gen DLSS 4を使用しない場合、25〜35%のパフォーマンス向上しか示していません 。これは、ラスタライズ性能の向上が限定的であることを示唆しており、DLSS 4の恩恵を受けられないゲームでは、パフォーマンスの向上が期待できない可能性があります。
10. Cooler and PCB Design
RTX 5000シリーズ、特にRTX 5090では、新しいクーラーとPCB設計が採用されています 。この新しい設計により、RTX 5090は、575Wの消費電力でありながら、2スロットカードとして実現されています。これは、前世代の巨大なGPUと比較して、大幅な小型化と言えるでしょう。
11. RTX 5000シリーズを使用する上での注意点
- 上記の問題点に加えて、RTX 5000シリーズは、前世代よりも消費電力が増加しており 、電気料金の増加につながる可能性があります 。そのため、電源容量が不足しないように注意する必要があります。
- また、RTX 5000シリーズは、PCIe 5.0に対応していますが、PCIe 4.0とのパフォーマンス差はほとんどありません 。そのため、PCIe 5.0対応のマザーボードを新たに購入する必要性は低いと言えます。
- 4K以下の解像度では、CPUがボトルネックとなり、RTX 5000シリーズの性能を十分に発揮できない可能性があります 。
- RTX 5000シリーズは、電力効率の面で、前世代よりも劣っている可能性があります 。
問題への対策と回避策
ROP不足
- NVIDIAは、ROP不足が発生したユーザーに対して、グラフィックカードの製造元に交換を依頼することを推奨しています 。
供給不足
- 残念ながら、供給不足に対する直接的な解決策はありません。正規の価格で購入できるようになるまで待つ、または、中古市場で購入するなどの選択肢があります。
クラッシュとブラックアウト
- ドライバーを以前のバージョンにロールバックする 。
- Windows 11でHDRをオフにする 。
- モニターのリフレッシュレートを60Hzに下げる 。
- Display Driver Uninstaller (DDU) を使用して、古いドライバーを完全に削除してから、新しいドライバーをインストールする 。
- PCIeの速度をGen 5以下に下げる 。
- 最新のドライバーアップデートをインストールする 。
- VALORANTをプレイする場合は、GeForce Game Ready Driver 572.42以降をインストールする 。
- フレーム生成に関連するオーバーライドを無効にする 。
VRAM容量の不足
- VRAM容量の不足に対する根本的な解決策はありません。ゲームの設定を下げてVRAMの使用量を減らす、または、より多くのVRAMを搭載した上位モデルを購入するなどの選択肢があります。
結論
GeForce RTX 5000シリーズは、高いパフォーマンスを誇るGPUですが、ROP不足、供給不足、クラッシュ、VRAM容量不足、価格高騰など、いくつかの問題点が指摘されています。これらの問題点は、ユーザーエクスペリエンスに悪影響を及ぼす可能性があります。
NVIDIAは、これらの問題点の一部を認識しており、解決に向けて取り組んでいると発表しています。しかし、根本的な解決には時間がかかる可能性があります。
RTX 5000シリーズの購入を検討しているユーザーは、これらの問題点と、それらに対する対策を理解した上で、購入を決定する必要があります。
ユーザーコミュニティでの議論
RedditやSteamフォーラムなどのユーザーコミュニティでは、RTX 5000シリーズに関する様々な議論が行われています。
- Redditでは、ブラックアウトの問題やドライバーの問題について、多くのユーザーが報告や意見交換を行っています 。
- Steamフォーラムでは、RTX 5000シリーズのVRAM容量不足や価格の高騰について、懸念の声が上がっています 。
- Linus Tech Tipsフォーラムでは、RTX 5000シリーズのパフォーマンスや価格について、活発な議論が行われています 。
これらの議論を参考に、ユーザーはRTX 5000シリーズのメリットとデメリットをより深く理解することができます。
将来の展望
RTX 5000 Superリフレッシュでも、同様の問題が発生する可能性があります 。NVIDIAが、これらの問題にどのように対処していくのか、今後の動向に注目する必要があります。
また、RTX 5000シリーズの問題は、AMDの競争力に影響を与える可能性があります 。AMDは、RDNA 4でハイエンドGPUを投入しないことを発表しており 、RTX 5000シリーズの不具合や供給不足が続けば、AMDが市場シェアを拡大する可能性も考えられます。
さらに、RTX 5000シリーズの価格高騰は、競合他社のグラフィックカードの価格にも影響を与える可能性があります 。
12. 結論
GeForce RTX 5000シリーズは、高いパフォーマンスを誇るGPUですが、ROP不足、供給不足、クラッシュ、VRAM容量不足、価格高騰など、多くの問題を抱えています。これらの問題は、ユーザーエクスペリエンスに悪影響を及ぼす可能性があり、一部のユーザーからは、RTX 5000シリーズは「最悪の世代」 であり、購入する価値がない との声も上がっています。
NVIDIAは、これらの問題点の一部を認識しており、解決に向けて取り組んでいると発表しています。しかし、根本的な解決には時間がかかる可能性があり、ユーザーは、最新情報やユーザーコミュニティでの議論を参考に、購入を慎重に検討する必要があります。
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